認知症110番

義母のトイレ

 義母(85歳)と長男夫婦の3人暮らしです。義母は、週3回デイサービスに通っています。物忘れがひどいのですが、歩行やトイレ、食事は自分でできますので日常生活はなんとか見守りながらできています。先日、少し食欲がなく、デイサービスの職員の方から「排便はいつありましたか」と聞かれましたが、自分でトイレにいっているので気にもしていませんでした。気になって様子を見ているのですが、把握できません。聞いてもチグハグな答えが返ってくるだけです。トイレは自分で流してしまうのでわかりません。体調を把握するにはどのようにしたらよいでしょうか。(長野県、長男の妻、60歳)

【回答】 「朝食後」の習慣づけを

 現在の日常生活ではお困りになっていないようですが、体調などを知るためには必要ですよね。しかし、ご自分でトイレに行けるので、そのことを気持ちよく続けてもらうことが大切ですね。トイレに行く様子や出てきたときのそぶりはいかがでしょうか。注意して見ていると、表情などが違うと思いますが、たとえば、朝食後にトイレに行かれたときなどはどうでしょうか。あるいは、トイレから出てこられたときにトイレの中の臭いをさりげなく観察してみてはいかがでしょうか。いずれにしても、ご本人のプライドを傷つけないことが一番大切です。

 言葉で言っても、忘れてしまうのですから、その場でできるように便が出たら自分で丸印をつける表などをトイレに張っておくのもひとつの方法でしょうが、嫌がるかもしれませんね。健康を維持するために便が出たかどうかを知ることが大切であることをわかってもらえれば、できるかもしれません。ご本人に聞くというよりも、自分でできる方法を考えてみましょう。

 いつまでも自分でトイレに行き、後始末までできることが大切なことですから、その流れのなかで嫌な気持ちになり、トイレにいくことを拒むようなことがないようにしないと逆効果になってしまいますので慎重に考えたいですね。いつまでもトイレを自分で続けられることを願っていても、加齢とともに身体機能は低下してくるのですから、排便のメカニズムを理解しておくことも大切です。食べものが胃に入ると胃・大腸反射が起こり、大腸が総蠕動運動を始め、便が直腸に送り込まれます。(生理学的に便意を感じるのは、便が直腸に入ってきたときです。)その結果、排便反射が起こり排便となります。これらは朝、副交感神経が働いているうちに起こりやすいので、朝食後が排便のタイミングに適しています。これを上手に活用すると排便の把握がしやすくなります。認知症が進んでくると便意をもよおしても、適切に行動が伴わないこともありますので、朝食後にトイレにいくことを習慣づけるようにしておくとよいでしょう。チェックするという姿勢ではなく、自然な雰囲気で行いましょう。

 また、食事の摂取量や食材にも影響されますので、食物繊維なども食べやすく工夫して、バランスよく食べてもらうようにしましょう。その際、「○○を食べると便通がよくなるよ」などという声かけではなく、「おいしいから食べてね」と強調しましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学