認知症110番

カギのかけ忘れ

 77歳の義母と同居している嫁です。家族は、長男家族(4人)と施設に入所している義父です。義母は物忘れがひどく、生活全般に見守りや援助が必要ですが、体は元気です。私は週3日仕事をしており、義母はその日はデイサービスを利用しています。デイサービスから帰ってくると家中の雨戸を閉め、近所のコンビニに菓子パンやお菓子を買いにいきます。その際、義母はカギのかけ忘れや置き忘れ、時には紛失することもあります。私が家にいるときは、雨戸を閉めたり、コンビに行っても声をかけたりできるのですが、これからは週5日仕事をしたいと思っていますので、どうしたらよいか迷っています。(東京都、嫁、49歳)

【回答】ドアに張り紙、声に出して読んで

 カギについては、さぞお困りでしょうね。お義母様は自分なりに雨戸を閉めたり、カギをかけることが家内安全のための行動と思っているのでしょう。そのことで周りが困っているとは思ってもいないし、むしろ家のことを考えてやっていると思っているのかも知れませんね。その気持ちを充分受け取りながらどうしたらよいかを考えましょう。

 デイサービスから帰る時間ですが、もっと遅い時間に送ってもらえるよう事業所と相談してみてはいかがですか。最後の送り時間にしてもらえるといいですね。現在は玄関までの送りだと思いますが、いつもの座る場所まで送っていただき、おやつを準備したうえで、デイサービスの職員にテレビのスイッチをいれてもらい、くつろげる雰囲気にしてはいかがでしょうか。好みのおやつでテレビを見ながら時間を過ごすことができるようにするのもひとつの方法だと思います。目の前に食べるものがあることで、買い物に出かける意識が薄れるのではないでしょうか。ケアマネジャーやデイサービスの職員にも相談し、よい知恵を借りましょう。

 カギは大切なものという思いがあるからこそカギを閉めるのではないでしょうか。玄関のドアの内側に「カギの閉め忘れに注意」と書いた紙を貼っておくのも一つの方法です。注意がお義母様に行き届くように、家族が出かけるときは、声を出して読んでみることです。必ず効果があるとはいえませんが、「カギについて注意する」という思いが伝わるだけでもよいと思います。カギをかける動作は、生活習慣の流れで無意識にしていることが多々ありますので、張り紙を見て読むことで意識することができ、注意することにつながる場合もあります。小さなことでも試みて、できたときは感謝の言葉を忘れないで伝えましょう。感謝されることによって嬉しくなり、カギをかける行動につながることもあります。

 日々の生活では、お義母様の身体が元気なだけに他にも困ることがたくさんあると思います。困ることが重なっていくと、ついついあなたの表情も暗くなってしまいますね。そんなあなたの表情を感じ取ってお義母様は何とかしようと思い、逆にチグハグな行動になってしまいがちです。介護をするあなたが気持ちよく笑顔で接することが大切ですので、自分自身の気持ちが穏やかになるようなことを優先しましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学