認知症110番

デイサービスでの外出は危険?

73歳の妻(認知症、要介護2)と夫(75歳)の二人暮らしです。子ども3人(長男・次男・長女)は、それぞれ独立し別世帯です。長女家族が車で30分の所に住んでおり、週に1回来て、買い物や掃除、調理をしてくれます。妻は週2回認知症のデイサービスを利用しています。そこでは、積極的に外出することが多く心配しています。認知症で周りのことがわからないのに外に出るということは、危険も多いと思うのです。事故は起きていませんがハラハラしています。もし、骨折してしまうと寝たきりになる恐れがあると思い不安です。(福島県、男性、75歳)

【回答】一人ひとりに援助計画作成

 優しい方なのですね。奥様が認知症のデイサービスに行っているときに事故に遭わないかと心配なのですね。認知症があるということでより心配されているようですが、認知症がなくても、私たちの周りは危険がいっぱいです。歩くことは危険だからといって、屋内でいすに座って歩くことを少なくすれば転倒は起こらないかもしれません。しかし、そのことが安全といえるのでしょうか。

 人が歩くようになったもともとですが、餌(えさ)を求めて森から森へ生きるために移動し、4本足から2本足で歩き始め、人間になりました。2足歩行することで、さらに進化し、脳が発達していったと言われています。歩くと、血液循環が活性化します。血液循環が活性化すると、身体全体が活性化します。特に脳は血液循環を一番必要とするところです。理屈を言っているように思えるでしょうが、歩くということは人にとって大切なことなのです。認知症がある人にとっても同様です。ただ認知症のある人へは見守りや手をつなぎ安全に歩けるようにすることなどが必要になります。

 奥様が通っておられるデイサービスは、認知症のある人への専門のデイサービスですから、かかわる職員も認知症のある人への理解やかかわり方を習得し、その上で外出のメニューなど考えていると思います。外出する際は、それ以前に外出の意義を十分認識し、安全に実行できるように、一人ひとりにどのようにかかわるかの援助計画を作成し、事故が起こらないように配慮していると思います。また、外出援助を行いながら、利用者の潜在能力などを見つけ、その後の援助に活用します。

 地域のなかでの外出は、近隣の方々にも、認知症のある方々への理解を深める機会にもなり、地域で暮らすことを考えたり、地域の活性化にもつながると思います。しかし、不安であることは確かなことですから、利用しているデイサービスの職員の方に、外出の計画はどのようにしているのか、奥様への援助方法はどのようにされているのかを聞いてみましょう。奥様へどのように配慮されているのかを聞くことで不安は解消されると思います。気になることは気軽に聞きましょう。デイサービスでも家族から聞かれることで、外出の意義や効果について話し合いができ双方にとって良いことと思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学