認知症110番

24時間一緒に暮らす義姉への配慮を

 母(77歳)は最近物忘れが目立ってきて、自分でも感じるときがあるようです。兄夫婦と同居しています。私は長女で車で20分のところに住んでおり、週に1〜2回実家に行き、母の様子を見ていますが、ついつい「ちがうでしょ」「さっきも言ったでしょ」「どうしたの」と口癖のように言ってしまいます。義姉はのんびりした人であまり気にならないようです。そういう雰囲気の中にいると、どんどん物忘れがひどくなって認知症になってしまうのではないかと心配で、時間を作って実家に来ているのに、義姉がもっと母の世話をしてくれればと思うのですが。(千葉、娘、50歳)

【回答】休息取れるように心がけて

 あなたが不安になる気持ち、よくわかります。物忘れに気づいたとき、加齢によるものだと何回も思ったことでしょう。それが、そうではなく、もしかしたら認知症かもしれないと思い、お母さまをこのままにしておくと、さらに進んでしまい、いろいろ想像し、さらに不安が大きくなって、どうしようかと戸惑っておられるのでしょうね。それでも不安で、実家を訪ねては、お母さまの行動ひとつひとつに目を向け、ちぐはぐな言動を指摘しながらも、なんとか元気で楽しい生活をしてほしいと願っておられるのでしょうね。

 でも、お母さまの身になって考えてみましょう。日々の何でもない行動に目を見張り、いちいち口を出され、あれやこれや指示されている状況は、心のゆとりどころか緊張感でいっぱいです。健康な人であってもミスをしてしまいそうです。ゆったりした気持ちで安定感のなかにいれば、その雰囲気で行動できることもたくさんあります。否定されたり、命令口調で強い言い方は、より不安を誘発し、どうしてよいか迷ってしまいます。忘れたり、迷惑をかけたくないと思うから、何度も聞いたりしているのですから、心の安定が保てるようにかかわることが一番大切なのです。少々の違いは指摘せずに、受け入れながら合わせてプライドを傷つけないようにすると穏やかになると思います。

 確かに、認知症は進行する病気でもありますが、理解しながらかかわっていくと、多くの方は日々の生活は支障なくできています。不安や心配はあると思いますが、日常生活ができていれば、できているそのことを認めましょう。認知症とはどのような病気なのか、どのようにかかわればよいのかを理解し、悪化した状態を想像して不安になるのではなく、いまできていることや穏やかな表情がどうしたら保てるかを考えましょう。そして、心配のあまり義姉に対してもきつい口調や厳しい表情で接していませんか。24時間一緒に暮らしているのは義姉です。義姉がゆったりしているからお母様も今の状況が保たれていることを理解し、義姉が少しでも休息を取り、自由な時間が取れるよう心がけるのがあなたの役割と考え方の角度を変えてみてはいかがでしょうか。お母様を取り巻く人たちが心地よく過ごすことが大切です。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学