認知症110番

紙袋や使い捨てスプーンをため込む母

 76歳の母と長女の私(50歳、会社員)の2人暮らしです。2年前から物忘れが目立ってきたので、週4回デイサービスを利用、週1回は1人で過ごし、土・日は私が世話します。生活で困っているのは、紙袋や新聞、発泡スチロールのトレーや使い捨てのスプーンなど捨てようと思っているものを次々に集めて、狭い部屋がいっぱいになり、動線になるところにも積み上げてあり、つまずいたり、ほこりがたまり衛生面でも気になります。捨てようとすると普段はおとなしいのに大声を出します。家の中がいつも散乱しイライラしてしまいます。(埼玉県、娘)

【回答】物品必要と、逆に頼ってみては

 お母様は片づけをすることで、母親の役割をしているのではないでしょうか。新聞や紙袋など手にとってみたものの、どこにどのように片づけるのかわからないので、習慣的に同じものをまとめて置いていたものが、どんどん溜(た)まってしまうのではないでしょうか。重ねていっても、軽いものですから崩れたりして散乱状態になってしまい、それをきちんと片づけられないのです。

 また、子育てをしているとき、幼稚園や学校で、工作などで使う物として、日ごろから準備していたり、工夫して使う材料として整理していた経験が過去にあるようにも思えます。他者から見ると、いらないものを集めている、それもぐちゃぐちゃして見るからに捨てる物としか見えない。捨てようとすると、執着して捨てさせない。時間の経過とともに、物は増え雑然とし、ほこりが溜まり、家の中全体が清潔感からほど遠く、生活する環境としてふさわしくない状況となり、仕事から帰ってくると、よごれがより気にかかり、お母さまの行動にもイライラしてしまうのでしょうね。

 お母様は、認知機能の低下からの物忘れによって、日常の生活に理解ができない部分があり、一緒に生活しているあなたは不快に思うのでしょうが、お母様が子育てをしていた頃に戻って考えてみましょう。子どもたちが学校で使ういろいろなものを準備しておき、子どもたちが困らないようにしていたと思います。日々の生活で必要な物品についても同様に管理等していたと思います。それを、今も考えながら行っていると想定すると理解できる部分もあると思います。

 そのことから考えてみましょう。物品が必要と仮定して、お母様に「急に必要になったので、紙袋とスプーンがほしいの」とお願する形をとると気持ちよく差し出してくれると思います。お願いした時の表情を見て険しい表情のときは次回にし、穏やかな表情であれば、たくさん要求したりと上手にかかわって、役に立っていることが実感できるように言葉をかけましょう。また、取り出しやすく整理して、見えるようにしてみましょう。少しずつ周りがすっきりしてくると、お母様もその雰囲気で整理整頓すると思います。あせらずにゆっくりとお母様のペースに合わせながらかかわりましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学