認知症110番

母を家でお世話、それとも施設入所?

90歳の母はひとり暮らしをしています。7年前から物忘れが目立ち家を離れるのを嫌がったので、姉(68歳)と私(長男、66歳)が交代で世話してきました。母は山口県、姉は埼玉県、私は東京に住んでいます。姉の夫に介護が必要になったのと、1年前に私が定年になり、現在は、山口県で2カ月世話をし、1カ月はショートステイを利用し東京の自宅で介護から解放されるようにしていますが疲れも出てきています。母は元気で目が離せない状況です。このまま家で世話したい気持ちと、施設入所をという気持ちで揺れています。(東京都、長男、66歳)

【回答】1人で抱えず足を運んで決めましょう

 姉弟で協力し合いながらお世話してきたのでしょうが、本当によく頑張ってこられましたね。頭が下がります。お母様もはっきりとはわからなくても、なんとなく穏やかに過ごされてきたと思います。しかし、認知症は病気ですから、治るというわけにはいきませんし、加齢とともに認知機能は低下していきます。同様に介護している自分たちも年を重ね、個人差はありますが心身機能は低下していきます。今まで頑張ってきた自分を認め、これからの自分の暮らし方を考えてはいかがでしょうか。

 まず、自分がどのように暮らしていきたいか青写真を描いてみましょう。おおよそ描きつつ情報等を収集しながら、お母さまへどのようにかかわることができるかの目安をつけましょう。いくつかの青写真を描き、遠い目標、中間、数年先、一年先と考えると少し具体化されると思います。施設利用等も考えて、施設の機能、施設や法人の理念、費用、医療が必要になったときの対応、居住環境、サービス内容、全体の雰囲気、利用者や職員の表情、その他、気になる部分をあらかじめメモをして、認知症の人へのかかわり方なども聞いてみましょう。事前に聞いておくことで、入所してからの生活がイメージできますしお母さまにふさわしい生活の場になるかがわかります。自分で足を運び自分の目で見て確かめておくことが大切です。そして、わからないことは小さなことでも聞きましょう。事前に知ることで不安解消になると思います。また、在宅で生活を続けていく場合でも、現状でよいのか、他の方法があるのか、自分のこれからを視野に入れて再度ケアマネジャーと話し合いましょう。

 お母様は自分の意思を伝えるのが難しく、施設・在宅を決めることはできない状況ですから、あなたがどちらかに決めることになるでしょう。考えに考えて決めても後悔の気持ちになると思いますが、事前に足を運び確かめながら決めることで、苦渋の決断であっても、現状にあっては最善であると考えましょう。大切なことは一人で抱え込まないこと、だれもが自分らしく生活をすること、だれかの犠牲の上に自分の生活がないことだと思います。いろいろな介護サービスがありますので適切に選んで活用し、あなたの笑顔をお母様に見せることが良いと思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学