認知症110番

職場と母の介護生活に将来が不安

 76歳の母と長女(47歳)の二人暮らしです。母は2年前くらいから、少しずつ物忘れがでてきました。父は高校生のころ亡くなり、その後母が働いて育ててくれました。勤めがあるので週5回デイサービスを利用しています。土・日は家で過ごしています。穏やかな性格で、言葉でいえばほぼ生活に困ることはありません。このまま家でみていきたいと思っていますが、認知症は進行性であり、みられなくなるのではないかと不安です。職場と家の往復の生活に荷が重く感じています。(埼玉県、娘、47歳)

【回答】笑顔を心がけ休む時間も考えましょう

 二人で協力し合いながら生活してこられたのですね。お母様は懸命にあなたを育てきたから、あなたもその思いを感じつつ今があるのでしょうね。優しいお母様が物忘れにより、生活が不自由になる姿を見るのは心苦しいし不安にもなるでしょう。

 人は加齢とともに心身機能が衰えていくのは自然でもあり、命は限りがあります。だれもが病気になったり、認知症で生活に不都合が生じることもあります。いろいろなことがあるのが人生でもあります。今のあなたは、お母様が物忘れはあるものの、二人で生活ができています。話が行き交わないことも多いでしょう、そのようなことが続くと不安がいっぱいになり、居ても立ってもいられなくなるでしょうね。そうは思いながら、たまにはお母様の笑顔に癒やされ、ほっとされ元気をもらうこともあるでしょう。

 これから先のことを考えると不安になるでしょうが、自分で介護情報を収集したり、ケアマネジャーから情報の提供を受けたりして、多様な考えを模索していきながら、今は二人で不安はあるものの生活ができていることが、二人にとって大切な時間だと思います。小さなことでも、意識の持ち方、感じ方で幸せだと思えるし、逆の考えにもなります。お母様は言葉では表現できない状態でしょうが、感じることは衰えていません。あなたのほっとした顔を見ることで幸せを感じておられ、今の生活の場が何よりも安定の場であり、母として、人としての存在感が満たされているから、認知症があっても穏やかに生活ができているのでしょう。あなたとの良い関係が一番の安心の源になっており、あなたが不安でハラハラしていると、その雰囲気が伝わって、お母様も不安で落ち着かなくなってしまいます。何よりもそばにいるあなたが笑顔で接することができる状態を保てることがポイントです。

 現在は、週5回のデイサービスとあなたのお世話で安定されていますが、もう少し介護サービスを増やして、あなたが少し休む時間を取れるように考えてはいかがでしょうか。

 定期的にショートトスティを利用するのもよいと思います。初めは不安でも慣れると落ち着いてくると思います。状況が変わることも当然のことですから、その時に応じて柔軟に考えていきましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学