認知症110番

ひとり暮らしの叔母に異変

 叔母(女性、84歳)はひとり暮らしをしています。独身で子どもがいませんので、めい(姉の子ども)の私が月に2回程度、訪問しています。母は3人姉妹で、叔母は末っ子で姉2人は亡くなっています。叔母は定年まで仕事をし、また性格もしっかり者で、一人でもきちんと生活していましたが、最近、訪問すると尿臭や食べ物の腐った臭いなどするのですが本人は気にせずにいます。冷蔵庫は古い食べ物でいっぱい、衣類も洗濯したのかわからず、部屋いっぱい散乱しています。叔母は友人や近隣とのお付き合いもありません。(東京都、女性、58歳)

【回答】まず実情を把握しましょう

 叔母様のお世話お疲れ様です。これまで、叔母様は一人できちんと生活をしてこられたので、尿臭や衣類が散乱している状況になることは想像できなかったのでしょうね。人によって個人差はありますが加齢とともに認知機能は低下していきます。だからといってすべてできなくなるということではありません。

 叔母様が生活をしていく上で、現在、どの部分に支障があるのかを客観的に見ていきましょう。忙しいでしょうが、月2回の訪問を週1回にして、どの程度の不自由さがあるのか、食べることに関しては、食べることの準備、火の始末、後片付け、食べ物の管理、衣類については、季節に合わせて、衣類を選ぶ、洗濯機を使うこと、洗濯物を干し・たたむ・しまうことができるか、入浴については、風呂の準備、体を洗うことができるか、髪を洗うことができるか、風呂の掃除や金銭管理、戸締まり、ゴミだし、時間の感覚など生活に必要な最小限のことがどこまで自分でできるか把握してみましょう。

 言葉で質問すると、「できるわよ、困っていませんよ」と言うと思います。自分では、食物が腐っていても、衣類が散乱していても、生活ができているのですから困っている自覚はないでしょう。昼に行って「昼を食べたか」質問しても、「食べた」と言うでしょうが、何を食べたかの記憶はなく、また「お腹がいっぱいで食べなかった」「食べたくなかった」など会話はその時に応じて言うので、実情はわかりにくい場合が多く、近親者としては、叔母様のこれまでの生活から、言葉で言っていることに理解を示しがちですが、実際の行動で確認しましょう。現実の生活を直視することは辛いこともありますが、困っていることを解決するきっかけになりますので実情を把握しましょう。

 把握しきれないこともたくさんあるでしょうが、生活をしていくのに不自由さが感じられれば、何らかの手を差し伸べる必要があると解釈してもよいと思います。今までお世話をしてきた叔母様が、これからも叔母様らしく生活していけるように、めいとしては良き理解者であり、援助者であってほしいです。良い援助をするためには、専門医の受診で適切な対応ができるようにし、生活面は公的サービスなどを活用し、あなたが一人で抱えこまないで、叔母様の生活を支えましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
元・大妻女子大学教授=介護福祉学