認知症110番

母への声かけ少ない義妹

 母は85歳で認知症の中度です。弟夫婦と同居しています。私は長女で車で40分のところに住んでいます。嫁が見ているのですが、声かけも少なく、もう少し面倒を見てほしいと思っています。週2〜3回訪問し、母と自分の昼食とおやつを持って行きますが、嫁はありがとうも言いません。母の部屋で過ごしますが、母は落ち着いています。週2回、デイサービスに行っていますが好きでないような感じです。家で落ち着いて暮らせるように義妹に言いたいのですが。(東京都、女性、59歳)

【回答】言葉で具体的に伝えては?

 お母様に対して、長女として姉として心配なさる気持ちとても良くわかります。時間を作り、義妹の手を煩わせないように、昼食やおやつまで持参して配慮しているにもかかわらず、ありがとうのあいさつもないことに不快感が募っているばかりか、認知症で動作なども声かけが必要なのに、それもままならない状況に穏やかな気持ちになれないのでしょうね。さらにこのままの状況では、認知症がさらに進んでしまうのではないかと不安でいたたまれないのではないかと思います。

 いまの現状を客観的に見ていきましょう。長女であるあなたは、母親のために時間をさいて、義妹に負担をかけないようにお世話をしています。一方の義妹も、せっかく来て下さる義姉に配慮して、義姉のあなたに義母との時間を持てるようにしているとも解釈できると思います。双方がお互いを配慮し合っているのではないでしょうか。でも、現実はそのようになっていません。気持ちだけでは伝わらないどころか逆になってしまうことがあるのです。気持ちはとっても大切なのですが、言葉で具体的に伝えると、お互いに分かり合え協力できる関係になれると思います。

 急に態度を変えるのは難しいでしょうが、ここは義姉のあなたから義妹に声をかけましょう。あなたからみると義妹のお母様へのかかわり方は不満もあるでしょうが、毎日お世話をしているとストレスや負担感・疲労感はたくさんあると理解しましょう。いつ、何時頃来て、何時に帰るのか、いる時間帯は義妹は自由にしてよいことなどを明確に伝えましょう。義妹は、具体的になることで時間を有効に活用できます。いままではわからないから、準備した昼食、計画がスムーズにいかなかったとも考えられます。お互いが声を掛け合うことで、気持ちが行き交うようになります。介護には、自然に人間性が豊かになっていく目に見えない要素が含まれています。義姉と義妹がお母様の介護を通してよりよい人間関係が構築され、そのことがお母様の穏やかな暮らしを支えることにつながります。できるところから実行してみましょう。

 意識して変えることで、双方が自分の態度を見直す機会になります。欠点を見つけるのではなく、良いところを探すことが大切だと思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学