認知症110番

声かけに義母はため息

 義母(78歳)と同居(次男・妻・孫)している嫁です。義母は数年前からちぐはぐな言動が見られ、声かけで生活は保たれています。次男は単身赴任で、嫁の私といつも一緒です。日常生活では常に声かけで、先日、お風呂あがりに「タオルで拭いて」「パンツをはいて」「次にシャツ……」と言っていたら、「わかるのに……」と小さな声で言いながら、ため息をついていました。恥をかかないようにと思って言っていたのに、急に違うことをしていたのかなと不安になってしまいました。(三重県、嫁、50歳)

【回答】一呼吸置くを心掛けて

  お義母(かあ)さまの物忘れから言動に違和感があるため、あなたはお義母さまに嫌な思いをさせたくない、プライドを傷つけたくないために、その時々の場面に応じて声をかけるよう配慮されていたことはよくわかります。それなのに、ため息とともに漏らした言葉が気になっているのですね。

 いつも一緒にいる生活はそれだけでも気になることがあると思います。物忘れで、どうすればよいかわかりにくくなっていれば、先回りをして、困らないように声をかけて、プライドを損ねないようにしていたから生活ができていたことは事実です。しかし、何もかも分らないわけではありませんよね。生活はそれまでの延長線上にあるものですから、体で覚えている部分もかなりあります。だからといっていつもわかるかというと、その時の状況によって違うので、援助する側は、その場面、場面で変わることを分かっていることが必要なのです。同じような場面であっても、同じではないのです。援助する側が混乱することも多々あります。

 今回の、この場面では、お風呂に気持ち良く入ることができ、お義母さまの気持ちも満たされ充足感から、体も心も良い状態だったのかもしれませんね。その延長で、いつもはできない更衣ができる状態だったところへの声かけだったのではないでしょうか。湯冷めしない程度に様子を見ながら見守ってはいかがでしょうか。できそうにもないときにそっと声をかける、分かっていても現実には難しいと思いますが、声をかける前に一呼吸置いてからを意識してみましょう。理屈は分かっていても行動するのはできるようでできないものです。思うようにいかないことが多いのが普通です。

 お義母さまに良かれと思っての声かけですが、物忘れが多くなっても、まだまだ潜在的な能力はたくさんありますので、声をかけることはとても重要であることを認め、失敗しないように声をかけるのではなく、できるかできないかを考えながら待ちの姿勢をとることを優先し、次の行動として声かけをすると良いように思います。いつも一緒ということなので、お義母さまひとりの時間を作ったり、あなたも楽しいあなただけの時間を作ることも考えてみましょう。長いスパンのなかでお互いが息切れしないように模索しながら、自分が楽しくいられることを最優先にしてくださいね。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学