認知症110番

いつもと違う様子の母

 82歳の母と長男(59歳)の2人暮らしです。長男は仕事で日中は一人で気ままに過ごしています。家の中の家事をすることに生きがいを感じているようで、自分のペースで行っていて支障はありません。最近、休みの日は楽をさせたいと思って外食に行くようにしています。先日、バイキングでは、お皿を持ったまま不安そうに立っていたり、回転寿司では回るのを見ているだけで取ろうとしませんでした。なんとなく、いつもと違うなと感じましたが認知症なのでしょうか。(岩手県、長男、59歳)

【回答】しばらく様子を見ては

 生活はいつも同じパターンで過ぎていきますので、変化は感じられないのですが、いつもと違う時間の過ごし方をしたら、変だなあと気づいたのですね。気づいたから気になってしまったのでしょうね。毎日の行動は、長年の習慣で体にしみ込んでいて、滞りなく動けるのですが、場所や環境が変わり、どうしてよいか判断できなくなってしまったと思われます。だからといって認知症とは言えませんが、認知症でないとも言えません。

 いつもの生活そのものは支障もなく過ごされていて、家事全般をされているのですから、その部分は大切に、お母様に任せて見守りましょう。一見すると、家事は簡単でだれにでもできるように見えますが、掃除、洗濯、調理、買い物とそれぞれの用途や方法が違いますし、慣れていても考えながら行うものです。掃除だってただ掃除機をかけているのではなく、汚れ具合を見ながら、物を整理整頓しながら行います。掃除機をかけている時の様子はいかがでしょうか。流れで行っていると、途中で声をかけられると、流れが中断され、その続きがスムーズにいかない様子が感じられると思います。家事は時間や方法を考えたり、行為は複雑にいろいろな要素が含まれ、それらを上手に組み合わせて成り立っています。認知機能の低下によってできなくなることも多々あります。

 日常の生活の中で、何か変わったことを感じた場合は、しばらく様子を見て見ましょう。様子を見るときは、変だなあという目ではなく、さりげなく動きや表情を見ましょう。不安そうだったり、戸惑っている雰囲気がないかどうか、時間を見ながら行動できているか、献立も今までと変わりなくできているか、キッチンの片づけや、洗濯物の整理整頓等変わりないか等など。監視する目ではなく、感謝の目で見てみましょう。

 休みの日に外食で楽しみが増えたり、外に出ることで緊張感があるのは良いことです。また、行動を共にすることで癒やされたり、観察の機会にもなりますので続けていただきたいですね。加齢とともに身体機能や認知機能が低下することは自然ですが気になるようであれば、認知症の専門外来を受診することを勧めます。できれば人との交流や介護保険の利用も考えてみましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学