認知症110番

母の尿の臭いに「イラッ」っと

 90歳の母と長男(58歳)の二人暮らしです。母は8年前に認知症と診断されましたが訪問介護やデイサービスで何とか過ごしてきました。80歳を過ぎていたので、数年くらいの介護が必要と思い、あと1年、あと1年と頑張ってきました。姉(64歳)も手伝ってくれるのですが体調を崩してしまいました。最近の母はトイレがわからなくなり、濡らすことが多く尿臭が染みついて、仕事から帰ってくるとその臭いに「イラッ」としてしまい、時には大きな声や手を挙げそうになってしまいます。(神奈川県、息子、58歳)

【回答】環境を変え、ゆとりを

 よく頑張ってこられましたね。大きな声を出しそうになったり、手を挙げそうになる気持ち、とてもよくわかります。行動にはならず抑えられるのは、お母様に対する気持ちが強いからなのでしょうが、かなりのストレスになっていることと思います。あと1年、あと1年と頑張ってこられたのでしょうが、認知症はやはり病気ですから進むということも頭に入れて今後を考えていきましょう。
 帰宅してドアを開けると尿臭がする、それだけでどっと疲れが増し、精神的に苛立つのはあたり前です。その苛立ちをよく抑えることができますね。でも、感情のある人間ですから、いくらお母様の気持ちを理解していても感情の糸が切れることがないとも限りません。糸が切れてしまわないうちに、少し精神的なゆとりを持てるように生活環境を変えてみましょう。お姉さまも体調を崩してしまわれては、今までのような協力は得られないと考えてサービスの見直しも視野に入れましょう。日常の生活でも介護の手間が増えてきたことから、要介護認定の区分変更も考えられますし、小規模多機能型サービスも考えてはいかがでしょうか。サービス利用はケアマネジャーに相談することがよいと思いますが、自分でも情報を得てください。あなた自身の今後を考え、長期的な生活プランを緩やかに考え、お母様の認知症が進み介護の手が多くなってくることなど総合的に考えて、お二人がそれぞれ自分らしく生活できることが大切です。
 トイレについては、場所がわからなくて漏らしてしまうようであれば、トイレがわかるように「トイレ」と書いたものを貼ったり、矢印で歩く方向を示したり、歩行がゆっくりでトイレまで行くのが間に合わないのか、下着を下ろすのが間に合わないのか、なぜ濡らしてしまうのか介護している人たちからも情報を得て、どうしたらよいのか模索しましょう。おむつなどもいろいろな種類があるので使用することも一つの方法です。お母様のプライドを守りながら、あなたの抱いている気持を理解してもらいながら、今できることは何か、どのような方法で行うのがよいか検討する機会を設け、お母様にかかわる人たちが連携を密にしながら支援できるようにしていきましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学