認知症110番

トイレ誘導を嫌がる母

 84歳の義母の介護をしている長男(58歳)の妻です。義母は中度の認知症があり、声かけや見守りが必要です。週3回デイサービスを利用しています。デイサービスで「トイレ誘導されるのを嫌がり、下着を濡(ぬ)らしてしまいました」と連絡ノートにときどき書いてあります。家でもトイレまでついていくのですが、使い方がわからないのか便器周りを汚し、後始末をする状態です。家でもトイレを我慢していたり、トイレから出てきても不機嫌な状態になることが多々あります。(千葉県、嫁、55歳)

【回答】できない部分だけ援助

 毎日いろいろと気を配りながら介護しているのですね。日に何度も行くトイレにその都度付いて行かれるのはさぞ大変なことですよね。いつもお義母様の行動を観察していることも気疲れするのではないかと推察いたします。一生懸命気を遣いながらしている介護ですが、少し見方を変えてみましょう。

 トイレに行くということは、トイレで用を足すために行くもので、トイレがある場所まで行き、下着をおろして用を足す、後始末をする、終わったら流すなどの一連の流れがあります。その中でお義母様は、トイレの場所は家では分かっているがデイサービスではどうでしょうか。下着をおろし、排泄(はいせつ)する、後始末をすること、下着を上げること、水を流すことはできたりできなかったりのようですね。排泄行為そのものはできるのですから、援助は必要ないと考えられます。トイレまで誘導は必要ですが、終わるまでトイレの前に人がいて、待っている必要はないのではないでしょうか。たとえば、排尿・排便している音、なかなか便が出にくくていきんでいること、おならが出ることもあるでしょう。ドアの前でそれらが聞こえることなどを嫌がっていると考えてはどうでしょうか。私たちだって、トイレはひとりでホッとできる空間です。転んだり、何か困らないようにと気遣っているのでしょうが、お義母様にとっては大きなお世話かもしれません。

 下着を下ろすことや後始末ができない場合は、援助が必要でしょうが、排泄行為のどこができないかを見て、その部分だけ援助するようにしてはいかがでしょうか。全体を援助するのでなく、できない部分だけに絞りましょう。お義母様が安心できるように、観察しながら気配を察知して援助しているつもりでも、お義母様から見ると監視されているような感じになるのではないでしょうか。一生懸命なさっていることも感じ方によっては、プライドが傷つき、全く逆効果になってしまうこともあります。お義母は情緒的な部分は豊かで、嫌だということを言葉で表現できないため、我慢したり不機嫌な顔をすることで、トイレの前にいられることが嫌なのだということを表現していると思われます。

 暮らす上で困っている部分だけを、プライドを守りながらさりげなく援助しましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学