認知症110番

同居を断わる田舎の母

 86歳の母は地方で1人暮らしをしています。3年前くらいから物忘れがひどくなり在宅サービスや近隣・親戚の世話になることが多くなりました。私は一人娘で、東京で仕事をしながら1人暮らしをしています。母に来てもらって一緒に暮らそうと何度も言うのですが「嫌だ。行かない」と意思がはっきりしています。あと2年で定年なので何とか現状のまま、定年後は帰ってもいいと考えていますが、周りの人たちのことを思うと考え込んでしまいます。(東京都、女性、63歳)

【回答】無理をせず自分らしく

 いろいろ考え悩んだ上で苦渋の選択をして過ごされておられる気持ちは痛いほどわかります。どちらを選んでも悩みは尽きないと思います。大切なことは自分の気持ちを優先し、ひとりで抱え込まないことだと思います。

 お母様は現在、在宅サービスや近隣・親戚の方々のお世話になられているようですが、元気な頃は近隣や親戚の方々に貢献していたのではないでしょうか。いろいろな意味でそれまでの暮らし方があっての今だと思います。これまで培ってきた生活が継続しているから、認知機能が低下しても身体で覚えている行為ができているので、急にあなたの所に同居すると今までの生活形態からの違いで生活行為に支障が出てくることも予測しておきましょう。今までできていたことができなくなってしまうこともあります。あなたが同居を求めても「嫌だ、行かない」と言うのは、娘の所に行くのが嫌なのではなく、お墓を守り親戚とのお付き合いをすることで先祖を守っているとも考えられます。嫁いだ家を守っているとも解釈できます。長い期間、離れて暮らしていると娘であっても細かい気持ちや暮らし方などはわからない部分も多くなっていると思います。あなたが良かれと思っていても違うこともありますので、お母様の人生はお母様が判断できるように分かるように説明してみましょう。

 介護サービスも泊り・デイ・訪問が一緒になっている小規模多機能型サービスなどもありますから、ケアマネジャーと相談しながらお母様の暮らし方に合うサービスを試みてはいかがでしょうか。多様なサービスがありますので、どのように暮らしていきたいかを明確にし、具体化的にどう組み合わせれば良いか、遠方にいてもケアマネジャーと連絡しながら情報を得ることで可能だと思います。

 あなたはあなたの考えで自分らしく暮らし、お母様を介護するということで自分を犠牲にしないことが大切です。ケアマネジャーのほかにも相談できる場を作って、自分でできないことや無理なことには助けを求めることを気軽にできるようにしましょう。一回限りの人生です、自分らしく生きることを強調してくださいね。それは当たり前のことなのですからね。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学