認知症110番

花を盗ったと近所から苦情

 77歳の義母は我々長男夫婦と暮らしています。義母は中度の認知症で物忘れがあります。週2回デイサービスを利用しています。他の日は「歩けなくなると迷惑かけるから」と歩くことに気を使い、日に何度も散歩に出かけます。30分くらいで戻ってくるので気に留めていませんでしたが、先日近所の方から「庭の花を盗った」「犬に餌をやった」などで困ると言われました。長年住んでいて近所とは今までは良かったのですが、最近疎遠で変だなと思っていた矢先だったので。(長野県、長男の妻、52歳)

【回答】義母の様子を伝えましょう

 なんとなく近所の方々が義母様やあなたを見る目や様子が変だなあと気になって、なぜなんだろうと思っていたら、近所の方から苦言を言われ、あまりにも予想外で戸惑っておられるのでしょうね。あなたはいつも義母様の行動を見守りながら安心して暮らせるようにしてこられたのでしょうね。

 義母様が失敗しないように、あなたは先回りしてアドバイスをしてこられたのでしょうね。散歩も家を出てから帰ってくるまで気にされていたものの、住み慣れた家でもあるし、近隣とのお付き合いもできていたので、道に迷い家に戻れないことを主に心配はしていたのだと思います。花を盗ったことは、一般的には人のものを盗ったと解釈しますが、義母様は花がきれいに咲いているなあと感じたことの表現として花を手折ったのだと思います。一般的なルールとしてはいけないことですが、その時の義母様は自分の世界にいたと解釈すれば、「とてもきれいな花が咲いているので飾って他の人にも見せてあげよう」と自然に思っただけと解釈すると、その行動も理解できると思います。犬についても同様で、かわいい犬だったので餌を与えたのでしょうね。花がきれい、犬がかわいいと感じる心があるということですよね。戻ってきたら必ず声かけをしましょう。

 これからも感じる心を大切にするために、近所の方にも、義母様の状態を理解して協力していただけるように、あなたから挨拶かたがた近況などを話し、近づいていくことを勧めます。周りの方々が散歩の途中で声をかけてくださるようになると気持ちよく散歩ができ、心身の活性化にも良いし、周りの方々の認知症の理解にもつながると思います。

 声のかけ方ですが、できないことに注目するのではなく、できることを探して、例えば、歩き方がしっかりしていますね、背中がピンとしていますね、などです。また、認知症の方は情緒感情面は豊かで心は生きています。嬉しい・悲しい・楽しい・腹が立つなどは分かりますので楽しさを共有できる声かけ、たとえば今日の洋服はお似合いですね、歩くと気持ちいいですねなど、義母様が散歩を続けたくなるような声かけをしましょう。

 途中で話しかけてくれる知人をつくることができれば、協力していただけるとなおいいですが、無理しないで、できる範囲で見守りましょう。ルールを乱したときは、すみませんと挨拶をすればいいと思いましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学