認知症110番

物忘れ外来に行った夫

 71歳の夫と私(妻、70歳)の二人暮らしです。夫は6年前に定年を迎え、その後は自由に暮らしていましたが、最近物忘れを自覚するようになり、気にしている感じです。その話題に触れるととても嫌がるので、プライドを傷つけないようにしていますが、最近物忘れ外来に行ったようで、今までとは違い外に出る機会を多くしたりしているのを見ていると、聞いた方が良いのか、そっと見守っていた方が良いのか気がかりです。逆効果にならないようにするにはどうしたらよいでしょうか。(東京都、妻、70歳)

【回答】行動を見守り楽しんで

 定年後はそれまでの忙しい状態から自由に気ままに過ごす快適な生活だったのでしょうが、ふと気づくと物忘れを自覚するようになり、自分でいろいろ考えた末物忘れ外来を妻のあなたに黙って受診し、その結果がどうなのか気になっているのですね。妻としては協力を惜しまないで共に歩んでいこうと思っているのに、何も言わない夫に不安を抱いているのですね。

 家にいてのんびりゆったりしていたが、何かの機会に今までとは違った物忘れ感やいろいろな情報から、もしかしたら軽度認知症(MCI)ではないかと思い当たることがあったのでしょうね。そこで受診をしたが、結果はわからないが以前とは違う行動をしている状態が続いていることは、何はともあれ、全体的には良い暮らし方だと判断してよいのではないでしょうか。生活を共にしていて、具体的に生活に支障が出ているのではないので、しばらくはご本人の行動を「なにかあったのかしら」と疑心暗鬼に見るのではなく、「何でも言ってくださいね」と聴こうとする姿勢でいればよいと思います。

 自分で行動しているのですから、その行動を見守り、「たまには一緒にしたいわ」といってみてはいかがでしょうか。断られたら素直に引き下がり、再度の機会を見つけましょう。歩き方が速くなったり、背筋がピンとしていたり、明るい表情や話題が楽しい場合はすぐに興味を示して励みになるような言葉をかけましょう。夫婦の会話も共通話題を考えて話し合う機会をつくり、その時の会話の受け答えや会話のテンポなど、自然に観察しましょう。食事の食べ方など日常生活の変化にもさりげなく気をつけてみましょう。

 ご本人自らの考えで行動しているのですから、判断力や先のことを考える力が十分あると思ってよいのではないでしょうか。刺激もなく毎日のんびりしていると認知機能も低下してしまいます。自分から積極的に行動できているうちはそっとしながらも気を配り、あなたの方から「最近物忘れが気になったので、物忘れ外来を受診してみようかしら」などと相談を持ちかけるのも良いのではないでしょうか。

 なんといっても早期発見早期治療がどのような場合でも良い方法だと思います。気になることはたくさんあるでしょうが、今の生活の中で体を動かしたり食生活に気をつけて楽しく暮らすことを考えましょう。変化があったら医療機関や相談機関など活用しましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学