認知症110番

毎日同じ料理と、こぼす父

 83歳の母と82歳の父は二人暮らしをしています。長女(60歳)の私は、車で1時間くらいの所に住んでおり、週に1回程度訪問しています。最近父から「毎日同じ煮魚と野菜炒め、みそ汁で嫌になる」と言われ、母に聞くと「いろいろ作っているよ」と言うので、料理は得意だったので気にせずにいました。ところが、ゴミ箱を見たら、魚の骨やもやしの空き袋、玉ねぎの皮、油揚げの空き袋など決まったものばかりで、少し変だなあと感じましたが……。(静岡県、長女、60歳)

【回答】母親の能力 上手に活用を

 高齢のご両親が自分たちでなんとか暮らしておられるのですね。訪問しお二人の顔を見て安心していたところ、お父様から、お母様が毎日同じ料理を作っていることを聞かされ、改めて暮らしぶりを見てみると、ゴミは同じものがたくさんで、どうしたものかと不安になられたのでしょうね。

 買い物をして料理も作り食べることはでき、それ以外も他人には迷惑をかけずにできているのですが、同じ料理を作っていることをどのように考えればよいのでしょうか。その料理が好きでこだわって作り続けているのか、昨日つくった献立を忘れて作っているか、2〜3日程度でしたら、材料が残っているという理由もあるでしょうが、その日その日買い物に行っていることからすると、やはり昨日のことを忘れているように思われます。それを一方的に変だというのではなく、今のお母様の能力を上手に活用できる方法を考えてはいかがでしょうか。

 料理は同じものであってもできるので続けられるような工夫が必要だと思います。写真付きメールができるのであれば撮っておく、作った料理名を書いておく、簡単な絵にして材料等もわかるようにしておくなどをお願いし、それらを見える所に置いてそれを見て翌日は違うものをつくる。お父様にも協力できそうなことを探して声をかけてもらう、食べるときも「おいしい」など感想を言ってもらい、今度は「○○が食べたい」などと具体的な料理名を言うなど。あるいは大きなカレンダーに作ったものを書き入れる。あなたが一緒に相談しながら、作れそうな献立を書いて、買う材料などもメモにしておき、たまには一緒に買い物や調理をしてどこか困っていることはないかを確認するのも一つの方法だと思います。今できることを励ましながら低下しないようにしていくことが大切です。

 調理は、何を作るかを考え、買い物、材料や器材をそろえ、料理にふさわしい切り方、調味料、火加減、味加減、器、盛り方、時間、後片付けなどいろいろな要素が組み合わされています。それらを上手に行っていかないとできないものなので、認知症の方にはとても難しい行為なのです。食べた後の笑顔は充実感や達成感も得られます。逆にこれを的確に行うことが継続することで、認知機能の低下を防止することにもなると思われます。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学