認知症110番

義母の料理が心配

 83歳の義母は長男夫婦(夫60歳、妻56歳)と結婚当初から同居しています。孫が独立し現在3人で暮らしています。夫婦は仕事を持っており日中は義母1人です。数年前から物忘れがあり、週2回はデイサービス利用、他の日は家にいます。調理は長男の妻がしています。時々、義母が作ってくれるのですが、味だけでなく使ったものがあちこちに散乱し、台所は汚れ、火の始末も心配で、むしろ、やらないでほしいです。「私が帰ってきてから作るから、作らないでね」と何度も言うのですが。(千葉県、長男の妻、56歳)

【回答】一緒に調理 勧めては?

 義母様は、あなたが仕事で疲れていると思い、せめて夕飯でも作っておこうとの思いからしている行動だと思います。きちんとできていれば問題はないのですが、思うようにいかないばかりか火の心配もあり、あなたにとってはしてほしくないことですよね。仕事が終わり、ホッとして気持ちを帰宅モードに切り替えると、義母様のことが頭に浮かび、帰宅の足が速くなり、帰宅と同時に不安と安心が複雑に絡まりイラッとすることも多いのではないでしょうか。

 義母様の物忘れの程度がわかりませんが、一見すると普通の高齢者で、あいさつや会話もでき他者の援助は必要とは思えないばかりか、留守番ができるように見えるのだと思います。しかし、実際は直接手を貸す援助ではなく、声をかけたり、見守りをしたりなどの配慮を必要とする援助で、他者からは見えない援助が必要なのだと思います。この援助は見えないのですが、この援助がないと生活はできませんし、かなりの負担になり、援助する方が疲弊してしまいます。声をかけるときも義母様のプライドを損ねないように、見守りも少し離れたところで何気なくそっと危険でないように確認しながらしていると思います。義母様のペースを尊重しながらの生活は、思っている以上に心理的な負担が重くなっていることでしょう。

 一方、義母様の気持ちはどうでしょうか。義母様自身はこれまでとは違うことに気づきながら、物忘れが多くなってきて、なんだか変だなあと感じつつ、長男夫婦に迷惑をかけていないだろうか、これから先は大丈夫だろうか等々不安を感じて過ごされていると思われます。少しでも家族に役に立つようにと思って、夕飯作りをするものの、作っている途中で、何をどうしてよいか判断できないで、材料や器等が散乱してより分からなくなってしまう状態なのだと推測されます。

 そうであることを知識として理解できても、実際にはなかなか難しいものです。調理する気持ちを受け取り、時間のあるときに一緒に話しかけながら、できそうなところを分担して作り、調理するときは一緒にするということをわかってもらう、また、調理台や蛇口など手を触れるところに、「一緒に作りましょう、帰ってくるまで待っていてくださいね」と書いて張っておくのも一つの方法だと思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学