認知症110番

ボーッと暮らしている妹

 73歳の妹と暮らしている姉(80歳)です。二人とも独身で、お互いに定年まで働きました。妹は友人も少なく定年後は気ままに過ごしていましたが、最近、生活時間が不規則で昼間寝て夜起きていたり、食事も食べたり食べなかったり、ボーッとしていることが多く会話もかみ合わないことがあります。趣味も出かけることもなく、私が作った食事を冷蔵庫から出して食べ、着るものにも頓着しない生活。私が言っても返事だけで行動につながらず、相談する人もいません。(東京都、姉、80歳)

【回答】まず受診 生活にリズムを

 お二人とも仕事を中心に生き生きとされてこられたのでしょうね。仕事をするという具体的な目的に向かい、意義を感じ真面目に暮らしてこられたのでしょう。その間、いろいろな過ごされ方があったと思います。姉妹とはいえ、それぞれの価値観やこだわりを尊重しながらも協力しあった生活の中では、それほど不都合や違和感はなかったのだと推察します。妹さんは仕事から解放され、自由になりのびのびと日々の生活を満喫されているうちに、時間の観念が薄くなり、制限もなく刺激もない中で、自分の役割や生きていく目的が薄らぎ何をして良いかわからないままでいるのではないでしょうか。そのような状況で暮らしているうちに、身体機能や心身機能が低下し、認知機能も衰えている状態なのではないでしょうか。まずは、健康状態を把握するために受診を勧めます。物忘れ外来などもありますので、近くの地域包括支援センターなどに相談してみましょう。

 日々の生活リズムを整えることも大切です。外に出る機会を作ることから始めましょう。関心があることを探していくことが近道ですが、お二人の生活に共通するもの、例えば、ご両親のお墓参り、親しい親戚などの訪問、子どもの頃行ったことのある思い出のある場所。お好きなものを食べに出かける、季節の洋服などの買い物などを試みてみましょう。最初はなかなか応じてもらえないでしょうが、ゆっくり時間をかけ、気持ちが動くまで辛抱強く待ちましょう。

 徐々に、その日の献立などを一緒に考え、近所のスーパーへ行く。途中に喫茶店があれば休憩を入れて、疲れないように、表情などを見ながら試してみましょう。慣れてきたら、健康のために近隣の散歩などを追加していきましょう。いずれも、家を出る時間を決めて、身支度を、その身支度を褒めるなど出かけることにワクワク感を持ってもらい、外でも心地良い時間になるように配慮しましょう。 少しずつ、あなたが決めることから、妹さんが決められるようにして、妹さんに頼る感じになるとよいですね。

 受診で、認知症と診断されても、いろいろな制度や介護サービス、相談機関もありますので、自分だけでかかえないで、周りの方々と一緒に考えていきましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学