認知症110番

服の着方が分からない母

 80歳の母はひとり暮らしです。私は近所に家族と住んでいます。最近物忘れが目立ってきたので、3カ月前から、デイサービスと訪問介護を利用しています。今までは自分で洋服を着ていましたが、最近、どれを着ようか、どのように着るのか戸惑うことが多くなり、「私、わからなくなってしまったわ」と困ったような顔を見ることが多くなりました。サービス利用になれ、やっとペースがつかめホッとしていたばかりなのに、今後どうなるか不安です。(長野県、次女、53歳)

【回答】声かけや更衣法 再確認を

 お母さまは、3カ月前まではひとり暮らしで、娘のあなたが様子を見ながらフォローして生活をされておられたが、物忘れが目立ってきたので、在宅サービスを利用し、生活リズムが整ってきたさなか、今までのお母様とは異質な戸惑う様子を見て不安になっておられるのですね。今までは、自分で好みの洋服を自分なりに着ることができ、何の違和感もなく過ごされてきたのに、洋服を着るといういつもの行為に躊躇(ちゅうちょ)している姿に違和感を持たれているのですね。

 サービスを利用する前は、自分のペースで過ごされてきましたが、サービスを利用するということは、多くの人と関わることになりますよね。例えば、洋服を着るという行為でも、デイサービスで入浴の際、何人もの介護職員がかかわり、声のかけ方が違います。また、訪問介護でも、その日の状況によって、着るものの調整をすることがあると思います。その際、介護職員の声のかけ方に違いがあるのではないでしょうか。推測ですが、多くの介護職員はお母様にかかわる際の声のかけ方や更衣の際のケア方法に少し違いがあるように思えます。その声のかけ方や更衣の方法をもう一度確認してみましょう。

 お母様は、介護職員のかかわり方の違いに、どう反応したらよいか少し混乱しているように思えます。認知症が進んだのではなく、介護職員のバラバラな対応が影響している場合もあります。ケアプランや計画書で目標は明確になっていても、細かい手順や配慮点が明確になっているか、もう一度確認してみてください。サービスを利用し始めての数カ月は、緊張もあるでしょうが、ケアの統一が重要です。些細(ささい)なことでも同じようにケアができるように具体化されているか、わかりにくいようであれば、「ここはこのようにしてほしい。声のかけ方はこうしてほしい」と具体的に言ってください。ケアをする側も具体的に言っていただくことでケアの統一ができます。

 サービスは、利用しながら利用者・家族と提供する側の双方で積み上げていくことで本来必要なサービスになり、その人らしい生活を支えることができるのです。介護サービスは利用することも大切ですが、相互関係を良好にし、共に創り上げていく創造性を楽しみながら活用しましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学