認知症110番

友人との約束忘れる妻

 78歳の妻と二人暮らしをしています。妻は8年前まで週3回近所の商店で店員をしていました。仕事を辞めてからも友人たちと山やカラオケに行き楽しんでいました。最近、友人との約束を忘れることが増え、先日も友人から「約束の時間になっても来ない」と電話がありました。妻はいつものようにテレビを見ていたので、伝えると「そうだったかしら」と慌てる様子もありません。携帯電話で連絡していましたが要領を得ず、「おかしいわね」と言うばかりです。(神奈川県、夫、80歳)

【回答】物忘れ外来もお勧め

 奥様はお仕事を辞めてから、日常の家事をしながら友人たちと山やカラオケで楽しんでおられたのですね。いつもは何事もなく楽しんでこられ、二人の生活も支障なく過ごされていたのですね。時々は約束を忘れても、それほど困ることもなく過ごされていたのでしょうね。友人たちは、今までも忘れることはあったのでしょうが、最近忘れることが多くなってきたので心配して、あなたに連絡が入ったのではないでしょうか。一度や二度であれば夫のあなたには言わないと思います。約束を忘れることが多くなり、支障が出てくることが重なって、思い余ってあなたに連絡したとのだと思います。

 お二人の生活は、長年同じ環境の中で行われているものですから、慣れているので不都合もなくできているのでしょうね。何か生活の中で変化はありませんか。起きる時間、朝食の準備、家事的なこと、買物や調理、金銭的なこと、身支度、季節感などはいかがでしょうか。変わった様子はありませんか。長年一緒にいると相手の変化に無頓着になっているかもしれません。この際ですから、もう一度奥様の日々の様子を観察してみましょう。以前と変わったことはないか、生活の中で、時間的な感覚、親戚とのお付き合い、ごみ収集日や分別、調理の出来具合等々、意識して観察してみましょう。友人から連絡があったことですから、友人にもどのようなことがあったのか聞いてみましょう。そして、これからも誘っていただき、その場合はあなたにも連絡をいただき、友人との触れ合いはできるだけ継続できるようフォローしましょう。

 日常生活でも。「お互いに忘れることが多くなってきたからメモをして忘れないようにしよう」と提案し、カレンダーに記入したり、メモ帳を作ったり、日記、読んだ本の感想、買物記録や献立の記録など、意識して行い話し合うのも良いと思います。行ったことを振り返り話し合うことで脳の活性化を図りましょう。

 そうはいっても、加齢と共に認知機能は低下していくと言われています。これをきっかけに、今後に向けて物忘れ外来など受診してはいかがでしょうか。お住いの近くにある地域包括支援センターに連絡し、地域の情報を得ることをお勧めします。一度立ち止まって、快適に暮らし続けるために考えてみましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学