認知症110番

母が望まない手伝いをする父

 78歳の父と77歳の母は2人暮らしです。私(長女・50歳)は近県に住んでおり、週1〜2回訪問します。母は病気がちで横になっていることが度々です。父は趣味もなく部屋着のままテレビを見てウトウトし、物忘れも多く、母の負担が大きくなっています。最近は買い物したものを冷蔵庫に詰め込んだり、日用品を戸棚に入れたりして、母が使うときに見当たらず困っています。母は口癖のように「何もしないでいいから」と言うのですが、父は家の中をウロウロしています。生活そのものは自分でできています。(埼玉県、長女、50歳)

【回答】できること、役割を増やして

 お母様は、お父様にのんびり気ままに過ごしてほしいと思い、家の中のことは自分の体調を見ながらやるので何もしなくていいと思っているのに、お父様が食品や日用品を片付けてしまうため、必要なものがどこにあるかわからず、手間がかかってしまうのでしょうね。お母様は「勝手にやってほしくない」という思いと、お父様の物忘れが多くなり、このままでいくと認知症になってしまうのではとの不安を感じ、以前のお父様のようにしっかりしてほしいと思っているのではないでしょうか。

 お父様の側から考えてみると、働いていた時は家のことをお母様に任せっきりだった、自由な時間が多くなり、家の中を見ると妻は具合が悪く横になっている状態、何か手伝って妻の家事負担を少しでも減らしてあげようと思い、自分でできることを手伝っているのではないでしょうか。ただ、そのことが逆に妻の負担になっているとは思いもよらず、良いことをしていると思っているのではないでしょうか。お母様の具合が悪そうなので手助けをしていると解釈してはどうですか、お父様はお母様を思いやり、なんとかしてあげたいと行動しているけれど、適切な行動ではないため、第三者からはウロウロしているように感じられるのだと思います。

 お父様は、生活そのものは自分でできるのですから、家の中でできること、例えば、簡単な調理はいかがでしょうか。初めはお母様が献立を考え、材料を買いに一緒に出掛け、帰宅後は冷蔵庫にしまうものを具体的にどのようにしまうのかを目の前でやって見せ、お父様に同じようにやってもらいましょう。次に献立に使用する材料や調味料を冷蔵庫や戸棚から出して準備、材料を洗う、使用する鍋類を出し、材料を切る、切り方も説明しながら一緒に行い、メモをとることが好きであれば、メモを取ってもらいましょう。調理はできそうなところから手伝ってもらいましょう。もちろん、着替えをしてもらい、丁寧に説明しながら会話も工夫し、途中で何度も褒めることも忘れずにしましょう。

 お母様にとっては手間がかかって負担になると思いますが、ある程度一緒にやるとできるようになります。お父様のできることや役割を増やしていきましょう。小さなことから充実感を得、日々の生活を活性化することが大切です。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学