認知症110番

新型コロナで帰郷できず母が心配

 81歳の母は物忘れが目立ってきましたが、地方で独り暮らしをしています。近所の方々とも親しく、妹家族は車で1時間の所に住んでいます。私は長男で、首都圏に1人暮らし、隔月で帰郷していましたが、最近は新型コロナウイルス感染防止でできていません。妹も同様で訪問できず、気になっています。母は携帯電話を持たず、固定電話にかけています。電話の声は変わりませんが、週2〜3回のことなのに、「忙しいんだから毎日かけてこなくてもいいよ」と言われます。物忘れが進んだのではと気になります。(長男、55歳)

【回答】今後に備え、趣味などを把握

 今は新型コロナの感染防止が最優先になっていることは誰でも理解していますが、それぞれ気持ちは複雑です。あなたの気持ち、よくわかります、時間ができて帰郷できる状況でも、首都圏から様子を見に行くことは躊躇しますよね。携帯電話で気軽に連絡できない状況ではなおさら気になると思います。近所の方々と親しくしていることが救いですが、今の状況で行き来ができているかどうかも気がかりでしょう。

 この際ですので、近所の方に様子を聞き、状況によっては妹さんに訪問してもらって近況を知ることで安心できるのではないでしょうか。週2〜3回の電話を毎日かけてあなたの方から話題を提供し、その受け答えで生活の状況や物忘れの状態を把握するのはいかがでしょうか。介護サービスなどを利用していないのであれば、お母様がお住まいの近くにある地域包括支援センターに現状を伝え、今後の不安に備えてはいかがでしょうか。今は元気であっても、加齢と共に心身状態は低下していく傾向にありますから。

 元気なうちに、介護が必要になった時にどうしてほしいかを話し合ってみましょう。地域にどのようなサービスがあるのか、公的なものと地域独自のサービスなどの情報を把握し、制度の仕組みや使い方なども知っておくと心強いと思います。同時に、お母様の若い頃や今までの生活の思い出、趣味なども聞いてメモしておきましょう。元気でこのまま独り暮らしを続けられることが望ましいですが、介護サービスが必要になっても自分の好みや生活スタイルを継続できるように、周りにいる人があらかじめお母様に関する情報を把握しておき、いざという時に代弁できるようにしておくとお母様らしい生活が保てると思います。

 別々に生活していると、分かっているようでも離れている間に趣味や嗜好の変化など分からないままになっていることが多いものです。小さなことのようですが日常生活では重要な要素です。毎日の電話での会話で食事内容を聞いたり、宛先を書いたハガキを送っておいて、その日の様子など簡単に書いてポストに入れてもらったりすることも良いと思います。パソコンなどIT(情報技術)関連への新たな挑戦や、続けられそうなことを探して実践していくと、今まで見えなかった新しい発見があると思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学