認知症110番

家族の在宅勤務で落ち着かない母

 86歳の母は娘家族(娘、夫、社会人の子どもの3人)と同居しています。物忘れが多くなり、特に時間や名前がわからなくなっています。最近は新型コロナウイルスの感染防止のため家族は在宅ワークが多くなりました。日中は娘と2人の生活でしたが、今は各自、自分の時間帯に合わせた生活となっています。食事の時間などバラバラで、母は孫が食事をしているとそわそわしてテーブルに座り食べたがります。家の中を歩き回って部屋のドアを開けるなどし、家族も気持ちに余裕がなくなってきました。(長女、61歳)

【回答】生活リズムを崩さないで

 新型コロナウイルスの影響でいろいろなことが変化してきました。理由があって現在の状況になっていることを踏まえてそれぞれが生活をしていますが、お母様にとっては理解の範囲外なのです。今は誰にとっても想定外のことで負担が重なり、ストレスが生じています。特に生活に不可欠な家事の負担が多くなっています。それだけでも精一杯で、家事をしておられるあなたはかなりのストレスになっているのではないでしょうか。今まではお母様とお2人での生活だったのが、家族が居ることでお母様の生活リズムが変化し落ち着かないのでしょうね。また、他の部屋での物音やいつもと違う気配が感じられ、気になって部屋のドアを開けるのでしょうね。お母様の側から考えると他の家族と同様に気持ちが落ち着かず、疲れを感じていると思います。ご家族は在宅ワークについて理解し納得されていてもストレスを感じているでしょう。理解できない状況の渦の中にいるお母様にとって、不安はかなり大きいと思われます。

 お母様に説明しても状況を理解してもらうことはなかなか難しいと思いますが、折々に現状を説明していくことで、家族が家にいることをなんとなく分かってもらうようにしてはいかがでしょうか。同時に食事などもお母様の記録表を作って食べたらチェックしてもらうことや、家族が時間差で食事をするときはいつものおやつを小分けにして食べていただくのもよいと思います。お母様の生活リズムを崩さず、洗濯物をたたむことや食事前にテーブルを拭く、お箸を準備してもらうなど、できることを探し、家族としての役割を担い、家族から感謝の言葉をかけてもらうなど、今だからできることを探してください。受け身ではなく、お母様が家族の一員としての存在感を実感できるようにすることが大切です。家の中だけではなく買い物への同行、散歩など体を動かす機会をつくって自然の空気や日光にあたることを意識して行い、気分転換できるようにしましょう。マスクをして行動することや人との距離を置くことも理解しにくいと思いますが、外に出て周りを見て行動することで自然な形でできるようになると思います。

 大切なことは日々の生活リズムを崩さないことです。緑や草花、外気に触れ日光にあたるなど自然に触れ、食事やお風呂、好みの衣服で生活し、適度に体を動かし健康管理をしましょう。当たり前の生活が何よりも重要です。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学