認知症110番

部屋を片付けたらウロウロ

 84歳の義母(要介護1)は次男家族(次男・妻・孫2人)と同居しています。最近家の中をウロウロしたり、外に出てはすぐに帰ってきたりと落ち着かない様子です。コロナ禍で家族が各部屋で過ごすことが多く、健康や室内の衛生に気を配っています。いろいろなものが置いてあった義母の部屋も片付け、すっきりと居心地よくテレビを見られるようにしました。ところが頻繁に部屋を出たり入ったりするようになり、家族全員が気になってゆったり過ごせません。(二男の妻、58歳)

【回答】なじみある居場所づくりを

 コロナ禍の今はだれもが不安を感じ、今後の見通しもつけにくいだけに、落ち着かない状況が少なからずあると思います。あなたは家族全員が健康に暮らせるようにと家事や食事に気を使い、特に除菌や換気などはこまめにして掃除などにも気を配られていることでしょう。義母様は何となく今までとは違う雰囲気を感じながらも、認知機能の衰えにより、状況を理解できずにおられるのではないでしょうか。

 義母様のお部屋を片づけ、清潔な環境で過ごせるようにされたのでしょう。それでも義母様にとっては、様子が変わっただけで自分の部屋である、ということを理解できないのではないでしょうか。確かに整理整頓されたお部屋は他者から見ると過ごしやすい良い環境に見えると思いますが、今まで雑然と置かれた品々は、義母様にとっては愛着のあるなじみの品物だったのでは。それらが片付けられてしまったことで何となく自分の居場所ではない感じが違和感となり、自分の部屋だという認識が薄れてしまったと思われます。私たちだって旅行から家に帰ってくると、何とも言えない安堵感を味わうと思います。その安堵感が希薄になり、不安になっていると考えると理解しやすいと思います。

 そうはいっても元の部屋に戻すことは難しいでしょうから、昔の写真や気に入っている品物などを、思い出話をしながら少しずつ一緒に飾るなどしてお部屋の環境づくりを試みてはいかがでしょうか。忙しいでしょうが時間をつくり、義母様のお部屋で一緒にテレビを見たりお茶を飲んだりして部屋にいる時間をつくり、自分の部屋であることが分かるように居場所づくりをしてみましょう。自分の部屋として徐々になじみの空間になってくると思います。足の踏み場がなくなってつまずく恐れがあると思われるときは、動線だけ確保して安全に歩くことができるように配慮しましょう。なるべく環境を変えずに維持することが大切ですが、同時に安全と清潔な環境も大事です。気苦労が多いとは思いますが、義母様が安心して暮らせることが家族の安心にもつながると考えてくださいね。

 認知症は進行することを予測して、医療と福祉サービスの両面から義母様にとって何が良いか模索し、家族にとっても負担が軽くなるように時々立ち止まって考えてみましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学