認知症110番

生き生きしていた父との落差に困惑

 72歳の父は、次男(38歳)の私と2人で暮らしています。最近コロナ禍で父も私も家にいることが多くなりました。以前は顔を合わせることが少なく、それぞれの生活をしていました。先日一緒に夕飯を食べた際、ビールで乾杯、その後そのビールをご飯にかけて食べるのを見てびっくり。また、冷蔵庫に鍵と歯磨き粉が入っていたり、テレビの前でボーとしていたりする姿を見掛けました。これまでのいきいきしていた姿とはかなりの差があります。認知症になったのではと思い、戸惑と不安で一杯です。(次男、38歳)

【回答】日々の生活を観察しメモ

 お父様もあなたもそれぞれがマイペースで暮らし、特に不都合なく過ごしていたのでしょう。それがたまたまコロナ禍で在宅での生活時間が長くなり、一緒に食事をしたら目の前で想像もしていないことが起こって声も出ないほど驚かれたのでしょうね。そして、日々の生活状態を振り返ってみると、冷蔵庫に入れるのにふさわしくないものが入っていたこと、活発に活動していたお父様が所在なさそうにテレビの前にいることに同時に違和感と戸惑いを覚えてどう対応したらよいか不安になられたのでしょうね。

 今までお父様は友人たちとの交流で活発に過ごされていたのに、コロナ禍で交流が少なくなり時間を持て余しているのではないでしょうか。このままだと認知機能の低下が疑われますので、まずは認知症外来の受診を勧めます。元気で不自由を感じていないお父様は受診を嫌がると思われますが、認知症にならないよう、軽度認知障害(MCI)の段階で適切な対策や治療をすると効果があることを穏やかに説明して、お互いに豊かな生活ができ協力し合えるように話し合う機会を作ってみてはいかがでしょうか。それまでにMCIに関する情報などを収集して納得できるような説明ができるように準備をしておかれるとよいと思います。

 さらに、お父様の日々の生活をそれとなく観察してみてください。起床後着替えなどの身だしなみ、洗面や歯磨き、食事はバランスよく食べているか、食事の準備や片づけ、買い物はできているか、金銭管理はどうされているか、カード類の管理は、入浴や爪切り、排泄状態、洗濯、睡眠状態、健康管理など生活で必要なことができているか、意欲や友人との関係、趣味活動、あなたとの会話内容や受け答えなど生活全般をさりげなく観察してください。なかなか気づきにくいと思いますが現状を把握してメモをしておき、受診時に医師に説明できるようにしておきましょう。

 この際ですから介護保険制度や地域での福祉についても広報紙やネットで調べてみてください。分からないときは近くの地域包括支援センターに聞いてみましょう。地域では公的なものばかりではなくインフォーマルな活動もたくさんありますので情報収集して活用してみましょう。制度や情報を知ることで不安は和らぎますし前向きになれますよ。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学