認知症110番

妹に「世話をしすぎ」と言われ

 84歳の認知症の母(要介護1)は長女の私と暮らしていますが、私が働いているため、日中は独りです。週3回デイサービスを利用し、近隣に住む義姉や妹が頻繁に訪問してくれるので何とか過ごしています。ただ、先日妹から「もっとお母さんにやらせればいいのに、手を貸しすぎよ」と言われてしまいました。「転んで骨折したら」「火事を出さないように」「身なりをきちんと」などと思い、先に気を回して世話をしています。母が不安なく過ごせるようにどれほど気を使っているか理解されず、爆発しそうです。(長女、60歳)

【回答】お母様の意思を尊重して

 あなたが日ごろ、どれほど考えに考えてお母様が快適に過ごせるようにしているか、口では言えないほどのご苦労をされているから生活が保たれているのですよね。義姉や妹さんたちも時間を作り精いっぱいお母様のお世話をなさっておられるのだと思います。それぞれが協力し合っているからお母様も安心できる環境で暮らせていることは、3人とも十分理解しておられると思います。

 あなたは仕事をしながらのお世話なので休まることはないばかりか、お世話は増えていると思います。なのに妹さんから思ってもいないことを言われて、日ごろの大変さが理解されず疲弊感が増大したのだと思います。妹さんはお母様の生活が安定していても、気力が低下していくことを気になされたのだと思います。複雑な気持ちでいっぱいでしょうが、いい機会だと思って日々のお世話を振り返ってみましょう。朝の起床時はどうされていますか。着替えの準備ができていて、お母様はそれに着替え、準備された朝食をベッドから移動して食べる。その間、あなたは出勤の準備をしながらお母様に時間を見て声や手をかけているのではないでしょうか。

 ここで少し考えてみましょう。お母様は自分が着たい洋服を選んでいるのでしょうか、ベッドから移動する際は手助けされ、食事は準備されていて食べるだけ。お母様の意思はどのように反映されているのでしょうか。あなたは長年一緒に暮らしてきたので趣味や嗜好(しこう)は十分把握している、お母様は認知症で自らの意思で動くのは難しい、と思っていませんか。

 自分で選択することは意思を表現することでもあります。着替えの洋服はお母様が選べるように工夫する、食事の際の食器選び、ご飯の盛り付け、お茶をいれるなど、今まであなたがしてきたことを、時間はかかると思いますが、見守りながらお母様にやってもらうようにするのはいかがでしょうか。

 お母様の意思を尊重してお母様らしい暮らしをできるようにし、少しでも自分でできることはご本人にしてもらうことが生活の活性化につながると思います。忙しいあなたが難しいなら、義姉や妹さんが来られるときにお母様の意思を確かめながらやってもらうように3人で話し合い、お母様の意思を日々の生活の中に少しずつ反映させていくとよいと思います。

 3人が協力し合うことでお母様が自分でできることを増やしましょう。あなたは気分転換できる時間をつくり、時には自分にご褒美をあげてくださいね。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学