認知症110番

「認知症の○○さん」と言う友が苦に

 75歳の仲良し4人グループで高校時代から続いています。子育て後は年に数回、食事会や温泉旅行を楽しんでいました。コロナが下火になったら温泉にと連絡をすると、そのうちの1人、Aさんの娘さんから「物忘れが目立ってきたので今回は休ませてください」と。それを他の2人に知らせると、会話に「認知症のAさんは」という言葉が何度も出るようになりました。気になって「今まで通り名前で呼ぼうよ」と言うと、そうねと返事はあるのですが、すぐに元に戻ります。旅行先でも同じことになると思うと気が重くなり、グループ解散の時期かなと悩んでいます。(友人、75歳)

【回答】「自分ごと」として話し合って

 仲良しの4人が楽しい時間を長い間共有できたことはそれぞれにとって素晴らしい財産ですね。グループの1人に物忘れが顕著に出るようになったとメンバーに伝えたところ、その中の1人が名前に「認知症の」とつけて話すようになり、それが認知症を強調するかのように思えて気になられるのですね。認知症という言葉の裏にある否定的な感じも受け取れ、今まで仲良く過ごしてきたにもかかわらず同様のことが繰り返されると思うと、今までの楽しい時間だけではない、苦痛を伴う時間も出てくるのではないかと心配なのでしょうね。

 認知症は病気の一種ですから、「認知症の○○さん」と言うのは違和感があると同時に、「分からなくなってしまった人」というように誤って捉えられてしまいますよね。年を重ねると心身の状態が変化してくることは分かっていても、身近に起こると自分もそうなるのではと不安になったり、よく知る親しい相手だけに認めたくない気持ちになったりと複雑なのでしょう。認知症についても、それぞれ理解していても受け取り方はさまざま。学生時代からの仲良しですからより友人を思う気持ちがお互いに深いのだと思います。

 この際ですのでその娘さんからご友人の状態を聞くというのはどうでしょうか。認知症とはどのようなことなのか、友人たちと身近な課題として話し合う機会を持ち、それぞれが情報を集めて学ぶきっかけにするのです。認知症に対して理解を深めていかれると、自然と友人に対しての呼び方も以前のようになると思います。ひとごとではなく自分のこととして話し合われるとよいと思います。

 高齢になってくると、友人を作る機会も少なくなりがちです。これまで培ってきたグループは素晴らしい宝物であり、お金では買えないものです。お互いの気持ちが理解でき、安らぎを感じホッとできる仲間は作ろうと思ってもできるものではありません。長い時間をかけて作り上げてきたからこそ安心して自分の気持ちを言える場になったのです。これからも大切にして、今後起こるであろう不安や心配事を話題に知恵を出し合ってみてはいかがでしょうか。さらに絆を強くしてかけがえのない豊かな人生を紡いでほしいと思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学