認知症110番

介護で離職が必要でしょうか

 82歳の母は次女の私と暮らしています。私は朝早くから午後8時くらいまで仕事があり、その間母は一人で過ごしています。母は若い頃からしっかりしており、自分のことは自分で行っています。薬の管理も自分でしていました。ところが先日、薬がたくさん余っているので尋ねたところ、「飲んでるわよ」と言います。服装も同じものを着ていて気になっているところに、かかりつけ医から「最近物忘れが目立ってきました」と連絡がありびっくりしました。そろそろ家にいるようにして世話をする必要があるでしょうか。定年までは仕事を続けたいと思っていたので悩んでいます。(次女、52歳)

【回答】両立考え踏み出して

 お母様はこれまで自分のことは自分で行い、特に困ることもなく過ごされてきたのですね。それがたまたま薬が適切に服用されてないことに気づき、またずっと同じものを着ておしゃれに関心が薄れてきたように感じられ、これまでのお母さまとは何となく異なる様子を気にしていたのでしょう。そこへ医師から電話で「最近物忘れが目立ってきた」と知らされ、不安が現実化して何とかしないといけないのではと、更に不安が大きくなられたのですね。

 一人で不安を抱えているとそれが大きくなって、早く何とかしなければと焦りを感じるようになります。家でお世話をする必要があるのではないか、そのためには仕事を辞めなければならないのでは、でも仕事は辞めたくないーー。今後のことを考えるとあれやこれや不安が募り、解決方法が見当たらず、渦の中に巻き込まれたような感じになっておられるのではないでしょうか。特に、しっかりしておられたお母様がこのような状態になることそのものを受け入れ難いく感じていらっしゃることと思います。

 あなたが不安になるのは当然です。まだ遠い先と思っていたことが現実になると、誰でも避けたくなります。冷静に状況を考えると認めなければならないし、現実を投げ出すこともできません。現実を認めつつ安定できる状態を模索し、不安を少しずつ和らげながら現実的な解決方法を見いだすことが必要です。お母様もあなたも安心して生活が継続できるように考えていきましょう。

 日々の暮らしの中で以前と変わったことは何か、かかりつけ医にもお母様の具体的な状態を聞いてから、身近にある相談先を調べましょう。いろいろな情報を調べることも必要ですが、まずは近くの地域包括支援センターに連絡し、どのようにしたらいいかを相談しましょう。同時に職場にも福利厚生面の相談をしてはいかがでしょうか。現在は介護休業制度などかなり充実してきました。仕事を辞めなくとも済むいろいろな仕組みがあり、介護との両立を図れるようになってきています。詳細を聞きながら両立を考え、自分らしく生活することを目指しましょう。決してあなた一人で介護を背負わないでくださいね。

 お母様はお母様らしく、あなたはあなたらしくそれぞれの人生を歩んでいくことが最優先です。時折苦しいこともあると思いますので息抜きも重要です。複雑な気持ちで一杯でしょうが一歩を踏み出してください。その一歩がこれからの安心した生活につながっていきますよ。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学