認知症110番

先輩の夫が認知症になり心配

 長年おつきあいをしている尊敬する先輩(75歳・女性)からの年賀状に、彼女の夫(80歳)がアルツハイマー型認知症でデイサービスに通っていて、心配ごとが増えた日々を送っていることが書かれていたため、驚いています。10年近く年賀状だけのやりとりでしたが、心豊かなご夫婦だったのでお二人で読書や音楽鑑賞などを楽しんでおられるとばかり思っていました。コロナ禍では訪問も控えたほうがいいのか、認知症の現状を見るのはつらいので思い出だけの方がいいのか、でも少しでも先輩の応援をしたいとも思います。どのようにしたらよいのか迷っています。(友人、72歳)

【回答】彼女の聞き役に回ってみて

 年を重ねてくると年賀状だけのお付き合いも増えますが、お互いの近況を知る機会でもあります。変化なく過ごしておられるとホッとしたり、病気のお知らせだと回復を祈ったり、年賀状の一言は情報交換だけではなく、懐かしい過去を共有でき、元気の源にもなりますよね。今回先輩からの一言は重たい情報で、想像もしていなかった状況をどう受け止めたらいいのか分からない一方で、先輩の心労を何とかしてあげたいという気持ちになられたのでしょうね。コロナ禍での訪問はしばらく控え、当面は電話で様子をうかがう方がいいように思います。

 あなたは、アルツハイマー型認知症と聞いただけで、「何もかも分からなくなってしまうのでは」と心配になったのではないでしょうか。

 確かに認知症は物忘れが顕著で生活に助けが必要ですが、現状はデイサービスを利用され、在宅サービスも活用しながらお二人で生活ができていると思われます。ただ、そうは言っても症状が進行していくことへの心配と、先輩も年を重ねていくなかでいつまでお世話ができるのか、との心配もあると思います。今は先輩の心労を少しでも和らげる力になることはいいと思います。

 認知症を理解されているとは思いますが、再度どのような症状なのかを把握したうえで、先輩がどのように考え、お世話しているのか聞き役に回ってみてはいかがでしょうか。一度に聞こうとしたり、答えを出そうとしたりしないのがいいと思います。あれこれ質問するのではなく、お付き合いをしていた頃を思い出しながらゆっくりと心を傾け、胸の内の思いにそっとうなずくという感じでしょうか。先輩がホッと息抜きできる機会になればいいですね。電話だけではなくLINEやメールを使うのもいいと思います。

 今後はますます超高齢社会となり、だれもが認知症を避けて通れなくなるかもしれません。地域では認知症に対する取り組みや支援などいろいろ展開されています。先輩の応援だけではなく、住んでいる地域の活動状況を知り、時間があれば参加して体験するのもいいのではないでしょうか。参加することで身近なことになり、課題も見えてくると思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学