認知症110番

「義妹が悪口を言う」と母

 80歳の母は長男夫婦と同居しています。長女の私は車で30分の隣の市に住んでいます。母は要介護1で認知症ですが、デイサービスを利用し落ち着いています。ある日、母が「A子さん(長男の妻)が私の悪口を近所の人に言っているのよ」と真面目な顔で言うので、その場は聞き流しました。A子さんはパートをしながら母のお世話を丁寧にしていますし、近所とはあいさつ程度のお付き合い。そんなことはないと思う一方で、母の言葉も気になります。長男(弟)に聞いてみようかと思うものの迷っています。(長女、56歳)

【回答】日常生活の変化、観察して

 お母様は落ちていて暮らしておられ、あなたも安心して訪問しているのでしょう。そうしたところに義妹さんが近所の方にお母様の悪口を言っていると聞かされ、日ごろの義妹さんのお世話の状況からそうは感じられないと思いながらも、お母様の言っていることも否定できず、気になられたのでしょうね。義妹さんのご近所との関わりはあいさつ程度ということですから、たまたまご近所の方に会ってあいさつをしていたところをお母様が見かけたのでしょうか。

 それにしても話の内容は聞こえないのではないでしょうか。お母様はたまたま何らかの状況から被害感情を持たれ、その不安感をぬぐい去ろうとそうした言動をされたと考えたらどうでしょうか。デイサービスでの利用者や職員との関わり、義妹さんのいつもと違う表情などから、何かのきっかけでお母様が不安を感じ、あなたに発した言葉のようにも思えます。事実はどうあれ、お母様が不安定な感情になったことが原因でしょう。日ごろの生活のなかで何か困っていることはないか、体調の変化はないかなど、それとなく観察してみましょう。

 弟さんに聞いてみようかということですが、それよりもあなたが訪問した際にお母様の表情や着衣、食事の状況、部屋の清潔度や雰囲気などに以前と違いはないか、確認してみてください。義妹さんもお母様のお世話で疲労もあるでしょうから、あなたがお母様を外出などに誘い、義妹さんに休む時間を与えることもたまにはいいと思います。

 1年365日一緒にいると、気配りやお世話もいろいろと気苦労があると思います。あなたは、義妹さんが丁寧にお世話をしているように感じておられるのですから、この状態がこれからも持続できるよう、姉として後方支援をしていくことがお母様の安心した生活の継続につながると思います。

 もちろんお母様にはゆっくりお話を聞き、悪口を言っていると言っても、内容を確かめるのではなく、何か困っていることはないかと気持ちを探ったり、話題を変えて気持ちを切り替えられるようにしたりするのもいいと思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学