認知症110番

きょうだいだけでの介護は無理

 74歳の母(要介護1)は認知症で、同じ年の父が介護していました。長男は車で2時間、次男の私は車で30分かかるところに、妹は他県に住んでいます。そろそろ両親の今後について話し合おうと言っていた矢先、父が脳梗塞で倒れて入院してしまいました。母は介護保険のサービスを使っておらず、きょうだい交代で母の介護を5か月してきました。しかし父は長期入院の見込みです。きょうだい3人とも共働きで、ずっと母を介護していくのは無理です。どうしたら母が安心して暮らせるか苦慮しています。(次男、45歳)

【回答】自分の生活犠牲にしないで

 両親を交えて今後のことを話し合おうと計画していた矢先のことで、あなたたちは後悔でいっぱいなのでしょうね。その気持ちを抱えながらお父様の入院とお母様の介護疲れと今後の不安でいっぱい、このままの状態が長引くと共倒れになってしまう恐れがあります。現実はいろいろと予定通りにはいきません。また、いつか訪れるだろう介護について考えておかなければと思いながら、気付けば時間が過ぎてしまっていることも少なくありません。仕事をしながら3人でよく頑張って急場をしのいでこられましたね。

 介護は365日必要なうえ、終わりが見えません。期限がわからないまま続けていくことは思っている以上に負担を感じます。正解はありませんし、試行錯誤しながら変化に応じて柔軟な対応が求められます。考え通りにはいかず精神的な疲労が伴いますので、3人が自分たちの生活をどうしたいのかを優先して考えましょう。

 そのうえでご両親の生活をどう支えていくか、お父様は当分の間は入院なので、お母様の介護をどうするか、まずは介護保険制度で利用できるサービスにはどのようなものがあるのか、在宅が無理であれば入所施設はどうかなど多岐にわたって考えていきましょう。

 介護サービスは多様ですので、まずはお母様がお住まいの地区の地域包括支援センターに相談するとともに、情報を集めるために足を運んで自分たちの目で調べてください。きょうだいそれぞれがどの程度支援できるか、違いを認め合い、話し合いましょう。感情的にならず、できる範囲で長続きできることに重点を置き、だれが主になって地域包括などと連絡をとるのか、入院費や介護費、家の管理などをどうするのか具体的に決めておきましょう。

 何度も言うようですが、介護は思っている以上に精神的負担がかかることを頭に入れておきましょう。きょうだい間でもめ事が起きないことが重要です。忙しいなか、簡単でないと思いますが、現在の自分たちの生活を優先してできることを確認しながら分担しましょう。

 3人が自分の生活を犠牲にせず自分らしい生活を継続していくことが大切です。ご両親の生活を無理せず支援するようにし、必要な時は話し合い、情報を共有しながら支援体制を整えていきましょう。認知症についても理解を深め、お母様のプライドを尊重したお世話をするとたくさんの笑顔に出会い、頑張ろうという気持ちになると思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学