認知症110番

夫が着替えを嫌がり臭います

 68歳の夫と私(妻、65歳)の2人暮らしです。夫は65歳で定年後、家でスポーツ観戦、時々散歩、私は週2日のパート、他の日はボランティアや趣味の活動をしています。夫は家事をしないので昼食は準備して出かけます。夫は1年前に運転免許証を無くし、その頃から物忘れが目立つようになりました。特に着替えを嫌がり、入浴後も脱いだものを再度着ます。洗濯機に入れても取り出して着て、そのまま寝ています。散発は定期的に行きますが、洗髪はせず、最近は臭いがきつくなってお手上げです。受診など無理な状態です。(妻、65歳)

【回答】会話の中で気持ちを探って

 あなたが入浴時や起床時に着替えを準備して置いてあるのに着替えもせず、毎日同じ衣類を着て悪臭がしている、何度も着替えてもらうよう工夫を重ねても徒労に終わり、もうどうしていいのか困惑しておられる状況ですね。他の日常的なことはそれほどでもなく、なんとなく保たれているので、日々暮らせているのだと思います。

 でも、我慢にも限度がありますよね。あなたは外に出る機会がたくさんあるので少しは気分転換ができていると思いますが、これからもこの状態が続くとあなた自身が疲れ切ってしまいます。ご主人様も認知機能が低下され、今までの自分との違いに戸惑い、同じ衣類を着ることで安心しているように思えます。そうは言っても悪臭まですると、このままにしておくこともできませんよね。

 受診して医師に相談したいところですが、それも難しい状況とのこと。会話は十分でなくともできているようなので、機嫌のよいときに、「これから2人でどのように暮らしていこうか」と話しかけ、話を続けてもいいような雰囲気だったら、あなたの方から「私は最近忘れることが多くなり不安になっているがあなたはどう? 最近困っていることや不安に思っていることはない?」などと普通の会話の中で状態を探ってみてはどうでしょうか。

 もちろん、質問などという堅苦しいものではなく普通の会話として自然な形で聞き、いやそうだったら他の話題に変え、日にちを変えて再度探ってはどうでしょうか。その結果不安に思っていれば受診などを勧め、可能ならあなたも不安に思っているとして一緒に受診を促すことができればと思います。急がずにゆっくりと様子を見ながら勧めましょう。お互いが年を重ね今後の生活について話し合っていこうという姿勢です。

 ご主人は時々散歩をするようなので、あなたも一緒に付き合い、その延長線でコーヒータイムをとって会話をしながら気持ちを探ってはどうでしょうか。また、あなたが出かける日の昼食は自分で準備してもらうことなども提案してみましょう。周りが良かれと思って動くのではなく、ご主人の気持ちを最優先にしましょう。

 着替えに関しては良い知恵はありませんが、現在着ている衣服と同じものを3着くらい購入し、入浴中に気づかれないように取り換えておく、下着など気づきにくいものから徐々に替えてみてはいかがでしょうか。同じものを見つけるのは難しいと思いますが、周りの方々にも協力していただき、似たものを探して試行するのも一つの方法だと思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学