認知症110番

最後まで夫の世話をしたい

 74歳の夫と妻の私の2人暮らしです。数年前から夫の物忘れが顕著になりました。先日の午後一緒にテレビを見ていたら、急に激しい雷雨となり、2階のベランダに干してある洗濯物を取り込んでから下りてくると、夫の姿が見えません。雷雨の中を捜しに出るも見当たらず、しばらくして近所の方が連れてきてくださいました。いろいろ神経を使いながら過ごしてきて、もう限界かなと、ふと思いました。でも他人には迷惑をかけたくありません。最後まで私が世話をしたく、何か良い方法はないかと思案中です。(72歳、妻)

【回答】「生き生きと過ごす」第一に

 あなたはこれまで家族のために頑張ってこられた夫に感謝しつつ、支援が必要な夫のために日々の生活を工夫すれば穏やかに過ごしていけると思っているのでしょうね。それでもはたから見ると、あなたが四方八方いつも神経を使いながら暮らしていてよく体がもっているなと思えます。あなたにとってはそれらのことが大変ではあるが、充実した日々なのでしょうね。お二人にとっては最善の暮らし方だと思います。他者があれこれ言うことではありません。

 でも今回、あなたはふと限界かな、と思ったとのこと、それはとても大事なことです。もう一度振り返ってみましょう。これから先も今の暮らしを続けていくことが可能かどうか、お二人ともまだ体力はあると思いますが、年齢から一般的に考えると体力が衰えていくことを予測し、今後を考えていくことをお勧めします。

 最初に考えたいことは、あなたも夫もそれぞれが誰かの犠牲にならず、一人の人として、個人として生き生きと日々過ごせることを第一にしましょう。誰かの支えがないと不自由な夫については、他者の支援を考えてはいかがでしょうか。そしてあなたは一人の時間を作ってあなたらしく過ごしては。夫婦2人の時間はゆとりをもって過ごすことができ、お互い自分らしさを失わずに済む方向で考えましょう。

 認知症に関するサービスはいろいろあります。まだ受診をしていないのであれば、認知症疾患医療センターや認知症外来、地域包括支援センター、電話相談など地域にはいろいろなサービスがあります。これを機に問い合わせてはいかがでしょうか。

 頭では理解できても行動に移すには勇気がいります。お二人がそれぞれの時間を楽しみ、笑顔のある生活が続けられることを願って勇気を出して一歩進んでみましょう。どの相談機関もあなたが抱えている悩みを心から受け止めてくれると思います。あなたがこれまでしてきたことを尊重してくれるでしょうし、またこれから先のことに関しても適切なアドバイスを期待できると思います。だれでも最初の一歩を踏み出すことは容易ではありません。しかし、その一歩がないと前に進むことはできません。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学