住みなれたまちで私らしく〜心地よい暮らしのヒント

認知症発症への不安解消したい
「カフェ」で交流 生活に張り

中村孝幸さん(社会福祉士、「認知症110番」電話相談員)

●認知症カフェに参加

 毎日が退屈。「認知症になるのではないか」という不安を解消したい

●事例の概要

 女性のAさん(76)は夫が3年前に病死し、独り暮らしとなりました。他県に住む長女が数カ月に一度は自宅を訪ねてくれます。

 Aさんは夫と70歳まで駄菓子屋を営んだ後、店を閉めました。それからは夫と趣味の国内各地への旅行を楽しんでいました。しかし、夫と死別後は徐々に旅行に行かなくなりました。外出は週に数回、近所のスーパーに出かける程度。自宅で過ごすことが増えています。Aさんはここ最近退屈を感じ、また物の置き忘れなども増えているような気がして「このままでは認知症になるのでは」との不安を抱えています。

●心配ごとは

 Aさんはここ数年、外出する機会や趣味に費やす時間が減っていることで、暮らしが不活発になり始めています。それが日常的になると、心や体の機能が低下していきます。特に高齢の人や持病を抱えている人は日常生活動作が難しくなったり、フレイル(虚弱)に陥ったりしやすくなり、また認知症の発症リスクにもなります。早い段階での改善が必要です。

●頼れる相談機関は

 地域には高齢者のためのさまざまな相談機関があります。その代表的なものが各自治体に設置されている地域包括支援センターです。行政用語で硬いため、親しみやすく「あんしんすこやかセンター」「熟年相談室」などまったく別の愛称で呼ばれていることが多いようです。この地域包括支援センターは高齢者のさまざまな相談を受け、適切な機関やサービスにつなぐお手伝いをしてくれます。その他にも、社会福祉協議会や市町村の高齢者福祉担当窓口、認知症電話相談などがあります。

●自分らしく暮らすためのヒント

 Aさんは今後の不安を少しでも解消できればと考え、地域包括支援センターに相談に行ってみました。センターの職員には、ここ数年自宅に居ることが多く、物の置き忘れが少し増えているような気がすること、あまり人との関わりもなく退屈な日々を送っていることなどを伝えました。

 話を聞いてもらう中で、Aさんは定期的な外出機会につながるさまざまなをサービスを知り、その中でもまずは自宅近くにあって気軽に入れそうな「認知症カフェ」に参加することにしました。

 認知症カフェは、認知症の人やその家族、地域の住民のほか福祉関係の専門職ら誰もが参加できるようになっています。和やかにおしゃべりしたり、情報交換をしたりする交流の場です。こちらも「オレンジカフェ」など、愛称で呼ばれている場合があります。

 認知症カフェに参加したAさんは、そこで同じ境遇にある人たちと出会い、日々の生活のことや認知症のこと、地域の情報などを教えてもらい、久しぶりに楽しい時間を過ごすことができました。カフェは定期的に開かれています。新たに知り合った友人と話をすることが楽しく、気持ちが楽になって日々の生活への張りも出てきたという実感もあり、毎回参加することにしました。

2025年6月