住みなれたまちで私らしく〜心地よい暮らしのヒント

認知症になっても安心して散歩を続けたい

ケース3・高齢者見守りサービス(キーホルダーやGPS=全地球測位システム)を利用する

中村孝幸さん(社会福祉士、「認知症110番」電話相談員)

●事例の概要

 男性のCさん(78)は長女と同居中です。長年高血圧症を患っていましたが、その後脳梗塞を発症しました。左半身に軽度の後遺症が残り、日々リハビリを行っていました。数年が過ぎた頃に記憶障害が見られるようになり、医療機関に掛かりました。検査の結果、軽度の脳血管性認知症と診断を受け、治療を始めました。薬物療法の他に、元々の高血圧症などの生活習慣病が悪化しないよう、食事の管理や定期的な運動を始めました。

●Cさんの心配事

 ここ最近、物をどこに置いたか忘れること(記憶障害)や日時や曜日などが分からなくなること(見当識障害)が少し増えてきました。また体を動かすよう散歩を行っていますが、普段歩いている道ではない道を歩いてしまうことがあります。建物が建て替わって新しくなったり、なじみのお店が無くなったりして街の風景が変わったことで、今自分のいる場所が分からなくなることも感じるようになっています。時に自宅への帰り道が分からず、街をさまよいながら自宅にたどり着くこともあり、本当に迷子になるようなことが起きるのではないかと不安になっています。

●Cさんが活用できるサービス(代表的なもの)

例1)見守りキーホルダーとは〜外出先で突然倒れて救急搬送された場合や、認知症のある方が道に迷い警察などに保護された場合、キーホルダーを持っている人の住所、氏名などの確認を素早く行うことができます。

例2)GPS見守りサービスとは〜スマートフォンやキーホルダー型のGPS端末を活用し、居場所を確認します。ご本人がGPS端末を紛失しないよう、靴に端末を埋め込むタイプのものもあります。家族は見守りアプリをスマートフォンに入れておけば簡単に本人の位置情報を確認できるようになります。

*)例1、2以外にも、各自治体はさまざまなサービスを用意しています。また介護保険のサービスには福祉用具の貸与もあり、本人が外出しようとするとセンサーで家族に知らせる機器などを借りることも可能です。介護保険を利用されている方は、担当の介護支援専門員にご相談してみてください。

●Cさんが私らしく暮らすためのヒント

 Cさんは、同居の長女と市役所の高齢者福祉窓口へ相談に訪れ、「見守りキーホルダー」を受け取る手続きをしました。受け取ったキーホルダーは、外出時にいつも持ち歩くバックに早速付けました。見守りキーホルダーは申請時に氏名や住所の登録を行いますが、キーホルダーには登録番号のみが表示されているだけで、個人情報が他人の目に触れることはありません。安心して利用できます。お守り代わりとも思える品物で、Cさんは外出時の不安な気持ちも軽くなり、散歩も今まで通り続けられるようになりました。

2025年10月