読んでみた

家族のように看取る〜介護施設の看取りの「心」を追う

甘利てる代著/本体1900円+税/パド・ウィメンズ・オフィス(03・5292・8200)

 介護施設のスタッフは高齢者を家族のように看取(みと)ることができるのだろうか。本書は民家を使って看取りを実践してきた宅老所と呼ばれる八つの小規模施設を取材した記録である。

 家庭や病院などどこからも引き取り手のない高齢者を受け入れるケースが多い。表情が全くない人、わめく人。それでも引き受け、添い寝をしたり晩酌に付き合ったり、一緒にふろに入ったりもする。「取材を通して痛感したのは、看取る人々の心が自宅になるということでした」と著者は振り返る。

 宮城県東松島市の「すみちゃんの家」を運営する伊藤壽美子さんもその一人だ。東日本大震災後に宅老所を再開し、慕って戻ってきた人を含む9人のお世話をする。「おかあさんのところがいい」と言われると「心を尽くしちゃう。私って単純だから」と笑い飛ばす。ほかの事例も参考になる。