読んでみた

認知症を乗り越えて生きる--“断絶処方”と闘い、日常生活を取り戻そう

ケイト・スワファー著、寺田真理子訳/本体2200円+税/クリエイツかもがわ(075・661・5741)

 4月末に京都で開催された国際アルツハイマー病協会国際会議で注目を集めた著者による初の邦訳本。副題の「断絶処方」は49歳で若年性認知症と診断された著者が認知症当事者の目で痛感し、考え出した言葉だ。

 昨日まで勉強し、働き、ボランティアもして充実した人生を送っていた自分に、医療・介護従事者は「家に帰って残りの時間を生きなさい」と言う。それが善意の助言であっても絶望や不安という連鎖反応を引き起こすと考えた著者は、リハビリや積極的な障害支援策によって日常生活を取り戻す一方、不治の病とあきらめず前向きに生きることが認知症の進行を遅らせ、知的能力と機能を維持できると訴える。著者が受けた南オーストラリア大学の障害支援サービスの威力は、診断後に学位を終了した事実が証明している。