読んでみた

死ねない老人

杉浦敏之著/本体800円+税/幻冬舎(03・5411・6222)

 「90歳になって老後が心配だとか言っている人がいて、一体いつまで生きるつもりだ」。昨年、こう発言した財務大臣がマスコミにたたかれた。「老人は早く死んだ方が社会のため」という空気があることを長年高齢者医療に携わってきた著者は懸念し、高齢者に「死にたい」と思わせない社会を考えるために本書を書いたという。

 長寿社会をいち早く実現したわが国は、その一方で医療技術の発達や家族らの思いの故に本人の意思に反して「死ねない」高齢者を大量に生み出している。そこで若い医師には「死に向かう患者さんに寄り添う教育」が必要と説く。また生きがいを持てない高齢者には人の役に立ち、好奇心を持ち、学ぶことを勧める。多死社会を迎え、死とともにどう生きるかの教育が求められている。