読んでみた

その介護離職、おまちなさい

樋口恵子著/本体759円+税/潮出版社(03・3230・0741)

 「同時多発介護」など社会現象を巧みに言い表すことで知られる著者が、人生100年時代を「大介護時代」ととらえ、介護離職より仕事をしながら、家事や生活を楽しみながら介護に取り組む「ながら介護」を勧める。その理由は、介護離職により「貧乏じいさん」を大量に生み出し、逆に税収や社会保険費を目減りさせ、孫世代にも悪影響を及ぼすと説く。

 理論を振りかざすだけでなく、具体的な解決策を紹介するのが著者の真骨頂だ。夫婦共働き、お一人様女性、夫が妻を看(み)るなど六つのケースごとに心がけたい注意点を挙げる。90代後半の女性が80歳前後の娘夫婦と同居した時、家にいたいはずの本心を隠し、ショートステイもいやと言わず、見事な「ケアされ上手」を貫いたエピソードは感銘を受ける。