読んでみた

ルポ 最期をどう迎えるか

共同通信生活報道部/本体1400円+税/岩波書店(03・5210・4000)

 まもなく、日本は年間の死者数が150万人を超す「多死社会」を迎える。「人生の最期を生きたいようには生きられないのか」。取材班はそんな思いから、「老い」と「死」の現場を歩いた。

 千葉県の介護施設に入居する女性は心疾患の悪化で終末期が近づき、さらに認知症の進行で自分の息子(64)すら認識できなくなりつつあった。だが、その息子は主治医から望む治療方針を聞かれ、答えられなかった。母と話し合ったこともないし、残された人生での希望を聞き取ることはほぼ不可能になっていたためだ。96歳でみとった後も、母の思いが分からないままだったことに悔いが残る。

 「望む形の最期」を迎えるための手立てに、「アドバンス・ケア・プランニング]
(ACP)の普及を挙げる。事前に家族や医療、介護の従事者と繰り返し話し合い、終末期に希望するケアを随時見直すものだ。ACPこそ、遺族が次の一歩を前向きに歩み出せるようになるカギと訴える。