読んでみた

「在宅ホスピス」という仕組み

山崎章郎著/本体1300円+税/新潮選書(03・3266・5111)

 「死にゆく人はみな師匠である」とあとがきで触れたように、著者が看取った事例の数々は尊厳に満ちた死とは何かを考えさせる。とくに聖ヨハネホスピスのボランティア組織を創設した立役者の一人重兼芳子さんはホスピスでの平穏な最期を望みながら、リスク承知で再発がんの切除手術を選んだ。結果として彼女の医療機器に囲まれた最期を目の当たりにして著者は「尊厳の有無は、その表面的な姿や形にあるというよりも、そこにいたるプロセスに、その人の意思が反映されているかどうかによるのではないか」と思い至る。

 本書は死に直面している人やその家族、いずれ死に直面するすべての人が人間らしく生き、死んでいくとはどういうことなのかを考える際に役立つことを目指して執筆されている。「病院で死ぬということ」(主婦の友社、文春文庫)等の著書がある著者の最新刊。