読んでみた

認知症の取扱説明書

平松類著/本体840円+税/SB新書

 認知症とはどんな症状で、周りの人はどう対応したらいいのかについて、理由も含めて平易に、体系的に記した専門家による一冊だ。

 世話をする義母から「財布をとられた」とふれ回られる主婦。「ものとられ妄想」の人は、介護に献身的な人をより疑いがちという。ただ、認知症の人は「幻視」で見えないものが見えてしまうこともある。高齢者の話を否定するのではなく、「必要とされている」と感じてもらうことが大切と説く。ちょっとしたことに「ありがとう」と声をかけるだけでも症状の発生を抑えられるという。

 認知症によかれ、と録音機付き電話を義母に贈ったのに、一向に使ってくれない。お年寄りの受け入れ拒否には、「認知機能がついていけない」と感じ、認知症の進行を自衛している側面もある。新しいグッズや環境も、許容範囲を超えるものは逆効果という。

 介護が辛くなると人をモノのように扱うことも起きる。「取り扱い方」を知ってもらうことで、優しく、人として扱ってくれるようになればとの思いを題に込めた。