読んでみた

自分が高齢者になるということ

和田秀樹著/本体900円+税/新講社ワイド新書

 長生きすれば半数以上の人が認知症になる。だとすれば「どうせなら愛されるボケになろうと決めてしまえば、いろいろな意味で人生は楽に」なるに違いない。「朗らかなボケ、穏やかなボケ」そして「愛されるボケ」になって幸せな老後を送りましょうという本である。

 逆説めいているが、著者が示す根拠はこうだ。老いはゆっくり進む。初期の認知症で記憶があいまいになっても、理解力や知能まで衰えるのは大分後になる。特に、体で覚えたことや長く続けてきたことはそう簡単には失われない。そうした「残存能力」を十分に活かしていけば、元気で朗らかな生活を送れるし、認知症の悪化を遅らせることができる。

 そんな事例として著者が引いているのが、認知症であることを公表した後も活動を続ける精神科医の長谷川和夫さん(89)と、98歳で亡くなる直前まで活躍していた俳人の金子兜太さんである。

 「愛されるボケ」になるには、上手に教わる力、世話をしてもらう力がいる。社会的地位があった人ほどプライドが邪魔をすることが多いので注意を要する。そこを乗り越えれば、自分にとっても周囲の人にとっても幸せが待っている、というのが、認知症やうつ病を専門とする老年精神科医である著者の結論だ。