読んでみた

高齢ドライバー

所正文、小長谷陽子、伊藤安海著/本体830円+税/文春新書

 75歳以上の運転免許保持者は2018年に532万人、2025年には1700万人を超えるという。現状と課題、あるべき超高齢社会のあり方について、産業・交通心理学、認知症、交通科学・医工学の専門家が考察した本である。

 今、75歳以上のドライバーが運転免許を更新するには認知機能検査が課せられる。結果によって最終的に免許が取り消されたり制限されたりする。とはいえ、改善すべき課題もある。①記憶検査主体のためアルツハイマー型認知症しか見つけらない②健常者と認知症予備軍の人の識別が難しい③運転断念後のアフターケアの不足④75歳未満のドライバーの認知症は見過ごされてしまう――などだ。

 所氏は「運転免許の自主返納を促す施策」が最も重要だと主張する。そのためには「自主返納後の環境作り」が必須になる。例えば、北海道伊達市や富山市で進められているコンパクトシティー化。病院や量販店などの生活インフラを街中心部に集約し、車に頼らなくても生活できる地域を作る構想である。

 伊藤氏が指摘するように、車の運転が高齢者の生きる意欲にも関わり、心身機能の維持の助けにもなるという側面も無視できない。この問題を考える際に必要な、様々な視点を教えてくれる本。