読んでみた

認知症を堂々と生きる 終末期医療・介護の現場から

宮本礼子・武田純子著/本体1400円+税/中央公論新社

 認知症の医療と介護に長年携わってきた二人の共著。豊富な事例から「終末期の幸せ」を考えさせてくれる。

 医師の宮本礼子さんは2012年に「高齢者の終末期医療を考える会」を立ち上げ、「どうしたら高齢者が穏やかに死を迎えられるか」を模索してきた。日本では患者の意思とは無関係に延命治療が行われることに疑問を感じていたが、欧米では延命治療は一般的でないことが分かった。患者の意思を尊重することが基本となっているからだ。「医療者は常に、患者本人にとって最善の医療とは何かを考える必要」があるという。

 看護師の武田純子さんは、長年の老人病院勤務の後、やはり「認知症の高齢者を穏やかに看取りたい」との思いから、2000年にグループホーム「福寿荘」(札幌市、定員9名)を開設した。訪問診療医、看護師、介護職員の熱心な取り組みもあり、これまでに64人を看取ってきた。認知症の患者さんを人として尊重し、本人の立場で考えるケアの事例が紹介されている。居心地が良く心のよりどころになることで、本人も家族も「終(ルビ=つい)の住処(すみか)に」と思えるようになるのだろう。

 認知症になっても自分の意志を貫き、最期まで「堂々と生きる」ことが可能な世の中に、というのが著者の訴えだ。