読んでみた

認知症対策の新常識

鈴木宏幸、渋川智明著/本体1400円+税/日東書院

 お年寄りに、子どもたちに向けて絵本の読み聞かせをしてもらえば、認知症を予防できないか――。東京都健康長寿医療センターが2010年から取り組んでいる研究講座「絵本の読み聞かせプログラム」の成果とともに、認知症について分かりやすくまとめた一冊だ。

 「読み聞かせ」は数十人程度の子どもを前に、お年寄りが声を出して絵本を読むスタイル。脳の活性化につながる「知的活動」で、他の人と交流でき、さらに長く続けられることなどが利点だ。読む側は文章と絵で情景を思い浮かべ、普段使わない言葉に触れて脳が刺激される。そしてその情報を子どもに伝える際は、客観的に伝える能力を求められる。

 読み聞かせを経験した人としていない人を比べた調査では、経験した人の方が情報を覚えている割合、記憶を長く保っている割合がそれぞれ高いことが分かっている。そうした調査データも盛り込まれている。

 他にも認知症の症状や診断基準、原因がどこまで分かってきたかなどについても、易しく解説している。