読んでみた

認知症フレンドリー社会

徳田雄人著/本体780円+税/岩波新書

 「認知症対処社会」から「認知症フレンドリー社会へ」--。これが本書の一貫したテーマだ。

 日本は「対処」が主流で、認知症の人の運転免許取り消しもその一つ。問題の発生を受け、認知症の人の行動を制限する。だが、そればかりでは免許返納を嫌って、認知症の診断を避ける人も出てくる。豪州では「自宅から5㌔以内」など、症状に応じて運転できる範囲や時間帯が決まるという。

 「認知症の人は特別だから、みんなで面倒をみよう」という図式も成立しなくなってきた。当事者が500万人を超し、特別な存在ではなくなったから。誰もが安心して移動できるよう社会の側のデザインを変えていく、というのが「フレンドリー」の考え方だ。

 認知症の人が有償で洗車などを担う、東京都町田市など国内の事例も紹介されている。認知症の人もそうでない人も、互いが互いを支える社会づくりを訴えている。