読んでみた

「お母さんは、だいじょうぶ」

文・楠章子、まんが・ながおかえつこ/1250円+税/毎日新聞出版

 ベストセラーの絵本「ばあばは、だいじょうぶ」の著者が、認知症の母との20年にわたる暮らしをまんがを添えて綴った。

 母「トマト」がアルツハイマー病と診断されても、私「オマメ」は長らく、母のことを隠していた。奇異の目を向けられるのが怖かった。だが、介護に追われるうち、互いに思いやりたいはずなのに、責め合ってしまう。家族介護の限界を感じ、ケアマネに打ち明けた。姉や兄と相談し、「仕事一番、介護は二番」と決めた。

 発症から20年。トマトは言葉を忘れ、表情も乏しくなった。そうした中、16年そばにいた愛犬が死ぬ。別れの朝、トマトはうっすら涙を浮かべた。母が感情の消えた人形のようになるのを恐れていたが、そうでないと知り、オマメは穏やかな気持ちでいる。

 母のことを明かし、楽になった著者も出版には迷ったという。それでも閉じた闇の中で介護に苦しむ人への一助になりたい、そして母が認知症になったことに意味を持たせたいと考え、踏み切った。