読んでみた

長生きできる町

近藤克則著/本体860円+税/角川新書

 健康格差研究の第一人者による著書。小学校区単位で65〜74歳の人の転倒率を調べると、7・4%〜31・1%と4倍の差があった。「転ぶ人が多い町」はスポーツへの参加割合が低かった。「転ぶのでは」と不安な人は外出を控え、閉じこもり、うつ状態となる。するとさらに筋力が衰え、転びやすくなる。社会参加に積極的な人は、要介護認定を受ける確率が低いことも突き止めた。同様にうつや認知症になりやすい町もある。

 歩く機会の多い都市部には健康な人が多く、認知症リスクも低い。以前、東京都足立区は都平均より健康寿命が約2歳低かった。生活習慣が要因とされた。野菜をおいしく食べられるレシピの提供などに力を入れたところ、健康寿命は5年で1歳以上伸びた。

 公園面積の広い地域の人は運動機能の低下していない人が多かった。笑わない人は1・5倍不健康だった。こうしたデータをもとに、「通いの場」の普及などお金に余裕のない人も参加できる環境づくりの重要性を訴えている。